【赤富士特集コラム vol.1】 驚異の数字 "4"と"7"

2013.07.02

制約の中から生まれた究極の富士

浮世絵は、江戸の庶民が、かけそば一杯ほどの値段で気軽に買えるフルカラーの印刷物で、さながら今でいう、人気役者のブロマイドや人気スポットの風景など流行をとらえた題材や色彩を取り入れ出版されていました。そして現代の出版物と同様、出版元は商品としての採算性を考えながら、絵師に下絵を依頼していたようです。

さらに、浮世絵は大量生産を目的とした商業印刷だったので、版元はコストについて大変厳しいものでした。そのため、制作に使える版木の枚数や使いう色数には制約があり、絵師はその制約の中で仕事をしていたのです。そんな制約の中で生まれたのが、北斎の傑作「凱風快晴(がいふうかいせい)」。人々の心を魅了してやまない赤富士の理由を、浮世絵制作の面から探ります。

驚愕!版木はわずか3枚、4面。

「凱風快晴」の版木は、アウトラインを摺る主版(おもはん)1枚と色の部分を摺る色板(いろいた)2枚のわずか3枚。版木に使われている山桜は、当時から安いものではなかったため、主版以外の色板は両面を無駄なく使用しています。なのでこの作品は、版木4面を使い摺り上げます。

1.主版 <輪郭線> 2.色板 <山の部分>
3.色板 <空(雲)の部分> 4.色板 <空の部分>

7回の摺りで完成!極少な摺り回数

通常、浮世絵の制作で使われる版木の数は5枚前後、摺りの回数も、10回~20回の作品が多いのに対し、「凱風快晴」の摺り回数はわずか7回。広重の「日本橋 朝之景」と比べると一目瞭然です。まさに驚異的な数字と言えます。

<北斎「凱風快晴」摺り工程>

<広重「日本橋 朝之景」摺り工程>

このように、ただ単に手間が少ないだけでなく、数ある浮世絵の中でも当時桁違いのベストセラー作品である「凱風快晴」は、版元納得の作品です。絵柄だけでなく、制作の視点から見ても、天才絵師・北斎が生み出した赤富士は、まさに"究極の富士"と言えるでしょう。

品質へのこだわり

品質へのこだわり

アダチの浮世絵は、手にして初めて分かる、熟練の技術と日本の伝統が詰まっています。

製作工程

制作工程

一切機械を使うことなく一枚一枚職人の手仕事により丁寧に作られている木版画です。

厳選素材・道具

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江戸当時の風情を感じられる当時の浮世絵の再現にこだわり、厳選した素材と道具を使用。

職人紹介

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浮世絵の基礎知識

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