【新復刻完成記念コラム vol.1】 紅嫌い

2013.10.09

 

この度完成した新作の復刻版浮世絵、窪俊満の「夜の句会」
「紅嫌い」と呼ばれる独特の色遣いが特徴的な見応えのある三枚続の美人画です。

…と言っても、聞き覚えのない単語に戸惑う方もいらっしゃることと思います。あまり聞くことのない「紅嫌い」とはどんなものでしょうか。

通好みのシックな作品-「紅嫌い」とは?

◎基調はモノトーン
白黒の濃淡を基調として、濃さの異なるグレーをいくつも使い分けています。

  高野の玉川  

◎派手な色を使わない
原色や濃い色を避け、淡い緑・黄・紫色など抑えた色合いが中心です。

  高野の玉川

俊満「高野の玉川」より

俊満「高野の玉川」より

その名の通り、紅色に代表されるような華やかな色を使わないことから「紅嫌い」と呼ばれています。多色刷りの錦絵には珍しくシックな色調でまとめられ、知る人ぞ知る通好みの上品な作品が多く見られます。

◆背後には、政治の影あり?

「紅嫌い」は、寛政の改革という幕府が打ち出した贅沢品の取締り政策を受け、その規制を回避するために用いられたとも言われています。
一方で、寛政以前から紅嫌いの手法は存在していることから、絵師たちの創意工夫による多彩な表現方法のひとつとして生み出されたものとも言われ諸説あるようです。

そしてアダチならではの制作の視点から見ましょう。
一見地味に見える「紅嫌い」ですが、実は、版木の数は普通の錦絵と同じぐらい使っているんです。
もともとフルカラーで作ろうとしていた作品を、贅沢禁止の取締りを受けてやむを得ず色を変えたのでしょうか。あるいは派手さは抑えながら実は手間暇をかけたものを作ることで絵師や版元の御上に対する反骨精神を表しているのかもしれない…と今回の新復刻にあたり色々と想いをめぐらせ、私たちも江戸時代の浮世絵の作り手たちの胸の内を想像しました。

◆「紅嫌い」だから出せる、色のインパクト

茶摘

では実際に「紅嫌い」の手法で描かれた作品には、どんな効果があるのでしょうか。

「紅嫌い」は、モノトーンが中心のため、色の付けられた部分が自然に目立って見えます。カラフルな通常の錦絵では埋没してしまいそうな、淡い色合いを印象的に目立たせるのに適しています。この効果を巧みに用いているのが、この度完成した新作「夜の句会」です。

俊満「茶摘」より

紅嫌いの傑作「夜の句会」

春の夜に催される、和やかな句会の様子を描いた本図。
画面全体はモノトーンで描かれていますが、良く見ると、句会の行われている屋内や、建物の外を夜桜見物にそぞろ歩く人々の一部分にだけ色がついています。モノトーンの部分は暗闇、色のついた部分が提灯や部屋の灯りの届く範囲を表しています。

絵師・窪俊満は「紅嫌い」を得意として数多くの作品を残していますが、夜の暗さと照明の明るさの対比を巧みに表した本図は、「紅嫌い」を知り尽くした俊満だからこそ描けた傑作といえるでしょう。

品質へのこだわり

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アダチの浮世絵は、手にして初めて分かる、熟練の技術と日本の伝統が詰まっています。

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厳選素材・道具

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職人紹介

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浮世絵の基礎知識

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