【「迎春セット」楽しみ方ガイド vol.2】 広重が描く四季の情緒

2013.12.28

これからお部屋に浮世絵を飾ってみたい、それも色々な作品を入れ替えて楽しみたい、という方へおすすめする迎春セット。数ある浮世絵の傑作から、今年はバリエーションに富んだ4つのテーマをご用意しました。

そのうちのひとつが季節にあわせて飾る迎春セットC 「広重の四季セット」。今回は一年で最も大きな変化である四季を描いた、歌川広重の傑作4点が楽しめるセットをご紹介します。

◆ 広重が描く四季の情緒

歌川広重は「東海道五十三次」や「名所江戸百景」と言った風景画のシリーズでその名を知られていますが、景色を描く中にも季節感を大事にした叙情性豊かな作風を得意とし、花鳥画などでも優れた作品を多数残しています。日本の繊細な季節の情緒を、広重はどのように表現しているのでしょうか。

春-「隅田川水神の森真崎」
向島から隅田川の対岸の真崎と水神の森を望んだ風景。真崎は桜の名所として知られていました。
全体に柔らかな色遣いで纏められ、近景の桜の花と遠景の淡い紅の春霞に浮かぶ筑波山が春らしいのどかさを感じさせます。
広重の演出:花のクローズアップ
風景画では遠景に描かれることが多い桜を近景に配置し、花を極端なクローズアップで描いた珍しい構図。風景画でありながらまるで花鳥画のような趣を感じさせます。
「隅田川水神の森真崎」


夏-「両国花火」
隅田川に掛かる両国橋近辺での花火を描いた本図。花火は江戸庶民に大人気の夏の納涼イベントでした。本図は縦長の画面を生かし、俯瞰する構図で花火の高さや大きさを強調し、その迫力を見事に描き出しています。
広重の演出:花火のぼかし
ぼかしで描かれた淡い光の輪郭上に鋭く火花を散らす独特の表現で、広重は花火の形や印象を見事に描き出しています。
この花火のぼかしと空のぼかしが重なる部分は非常に摺るのに難易度が高く、後の版ではぼかしが省略されている物もあります。
「両国花火」


秋-「月に雁」
大きな満月を横切り急降下する三羽の雁を描いた花鳥画の傑作。この季節に飛来する渡り鳥である雁と月の組み合わせは秋の風物詩の定番です。1949年に切手の図柄にもなったことでも有名です。
大きな月を細長い画面で大胆に切り取り、淡い青のぼかしの幾重にも重なった薄雲が画面に自然な立体感と臨場感を作り出しています。
広重の演出:印の朱色
夜の風景らしく押さえた色調で纏められた画面の中、印の朱色が差し色となって全体の調和をとっています。一見、絵そのものとは無関係に見えますが、印の位置も絶妙に計算されバランスの良い配置となっています。
「月に雁」


冬-「雪中椿に雀」
綿雪の積もる椿の花の周りを二羽の雀が戯れるように飛ぶ、庭前の一風景をそのまま絵にしたような親しみが感じられる花鳥画です。雀の仕草や表情には何とも言えない愛嬌があり、椿の赤色も愛らしく、冬の寒さの中にほっとするような温かみが感じられます。
広重の演出:雪の白
雪の白色の部分は何も色を乗せず紙の地をそのまま生かしています。ふんわりした雪の表現は、和紙の質感ならではのもの。
広重は更に椿の花の鮮やかな赤を傍に添えることで、白の印象を強調させています。
「雪中椿に雀」

折々の季節ならではの印象をより美しく見せる広重の工夫。数々の傑作はこんなちょっとしたところから生まれてきました。こうしたポイントをひとつ知るだけでも、作品鑑賞がぐっと面白くなるのではないでしょうか。
季節で絵を掛け替えると、自然と季節の移ろいを楽しむ気持ちの余裕が生まれ、日々の生活にもメリハリが生まれます。
新しい一年は、ぜひ迎春セットC 「広重の四季セット」と共にお楽しみ下さい。

品質へのこだわり

品質へのこだわり

アダチの浮世絵は、手にして初めて分かる、熟練の技術と日本の伝統が詰まっています。

製作工程

制作工程

一切機械を使うことなく一枚一枚職人の手仕事により丁寧に作られている木版画です。

厳選素材・道具

厳選素材・道具

江戸当時の風情を感じられる当時の浮世絵の再現にこだわり、厳選した素材と道具を使用。

職人紹介

職人紹介

最高の作品を創り出すために、日々技術の研鑽を積む熟練の職人たち。

浮世絵の基礎知識

浮世絵の基礎知識

意外と知らない?浮世絵の世界。浮世絵の基礎知識をご紹介。