【「迎春セット」楽しみ方ガイド vol.4】 北斎 vs 広重 冨士対決

2014.01.03

今年からお部屋に浮世絵を飾ってみたい、それも色々な作品を入れ替えて楽しみたい、という方へおすすめする迎春セット。
数ある浮世絵の傑作から、昨年の富士山・世界文化遺産への登録に大きな役割を果たした二大絵師、北斎と広重の富士の名品を揃えた「富士山世界遺産登録記念セット」の魅力を今日のコラムでは、お伝えしてまいります!お正月休み、是非ゆっくりとお読みください。

◆ 北斎「冨嶽三十六景」と広重「冨士三十六景

浮世絵で富士山というと皆さんまずは北斎の「冨嶽三十六景」を頭に思い浮かべる方が多いことと思います。70歳を過ぎた1831年頃に出版された「冨嶽三十六景」は、当時の富士講ブームに合わせ出版されたこともあり、空前の大ヒットとなりました。当初その名のとおり36図の予定でしたが、あまりの人気に10図が追加となり全46図となったところからもその人気ぶりをうかがい知ることができるでしょう。
また、浮世絵の中でも「風景画」というジャンルで初めて高い評価を得たシリーズでもあります。そして、凱風快晴や神奈川沖浪裏といった浮世絵を代表する作品は、今なお世界中の人々を魅了し続けています。
葛飾北斎(1760-1849)
 
一方、「冨嶽三十六景」の2年後1833年に出版された「東海道五拾三次」で一躍スター絵師の仲間入りをしたのが広重です。36歳の頃ですから当時の広重からすると北斎は親くらい歳の離れた大先輩だったわけです。若い広重にとって北斎は憧れの存在だったのでしょうか?それとも憎きライバルだったのでしょうか?いづれにしても同時代に風景画を描いていた絵師ですから意識しないはずはなさそうですね。冨嶽三十六景の出版から20年以上経った1859年に出版されたのが「冨士三十六景」です。出版前年に広重は版下絵を描き上げ亡くなっており、没後に出版されています。北斎の冨嶽三十六景に対抗して描いたと言われるこのシリーズは、まさに広重最晩年の渾身の作と言えるでしょう。
タテの画面で、人気作の二番煎じに陥ることなく、広重らしい穏やかな風景を描いています。36図の多くが、東海道を中心とする海岸沿いの風景であるのも、生涯、数多くの東海道の名所を描き続けた広重ならでは。温暖な東海の好天気の中、伸びやかに裾野の稜線を広げる富士の姿が美しいシリーズです。

歌川広重(1797-1858)


◆ 冨士と対峙し、描く




歌川広重 「駿河三保之松原」


 
北斎、広重のそれぞれが富士山と対峙して描いた名品。
  凱風快晴

葛飾北斎 「凱風快晴」
威風堂々とした富士の姿を描いた北斎の「凱風快晴」。様々な場所から描かれた冨嶽三十六景の中で特にその場所を特定する事なく、富士山そのものを正面から捉えた作品で、空高く聳える冨士を象徴的に描いています。

一方、今回の世界文化遺産の対象になり話題となった景勝地「三保の松原」から富士を描いた広重の「駿河三保之松原」。タテの画面にとてもバランスよく冨士が配置され、富士山の美しさが際立っています。

同じ富士山を描いた作品でも、山肌に迫った男性的な描写の北斎に対し、景勝地から眺める優雅に描いた広重とそれぞれの個性が良く表れた2つの富士図です。


◆ 波を描く -線の北斎、面の広重-




 
 

"Great Wave"として世界でも多くの人々に今なお愛される「神奈川沖浪裏」。そして、広重が北斎に対抗して描いたとも思われる「駿河薩タ之海上」。ここにも北斎と広重の特徴が良く現れています。

浮世絵で絵師が描く「版下絵(はんしたえ)」。この2つの作品の版下絵を比較すると波の表現に大きな違いが!北斎の波は線ですべてが描かれているのに対して、広重の波は意外にシンプルに描かれているところにご注目ください。広重の波をよく見ると、色の部分でいくつかの藍色を重ねる事で波の動きを出しているようです。

この2つの波の表現を見ても、広重は北斎に挑みつつも独自の表現を求めて描いていた事がわかります。

「静と動」の富士山を描き分けた北斎と広重の名品。それぞれの絵師が考え抜き、経験と技をもって描いたからこその浮世絵の定番と言えるでしょう。初めて浮世絵を飾ってみようと思われる方には是非オススメの4点です。

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品質へのこだわり

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厳選素材・道具

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職人紹介

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浮世絵の基礎知識

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