アダチセレクト「話題の一枚。」~ 喜多川歌麿「ビードロを吹く娘」vol.1~

2014.03.19

アダチセレクト「話題の一枚。」

市松模様の着物を着こなし、手にしたビードロをくわえる少女。
袖を揺らす春風が今にもこちらへ吹いてきそうな、軽やかで生き生きとした佇まい。

アダチセレクト「話題の一枚。」の第二回は、美人画の名手・喜多川歌麿の傑作「ビードロを吹く娘」の魅力に迫ります。

人気・知名度ナンバーワンの美人画

数ある美人画の中で最も高い知名度と人気を誇る、喜多川歌麿の傑作「ビードロを吹く娘」。赤い市松模様の着物が印象的な本図は、当時評判だった町娘を描いた爽やかな作品です。

ビードロを吹く娘

1955年に発行された日本初となるカラー印刷の記念切手の絵柄に選ばれ、プレミアが付くほどの人気を呼んだことでご存じの方も多いかと思います。

その絵柄はよく知られている本図ですが、オリジナルの現存数は意外に少なく、所蔵は東京国立博物館やホノルル美術館、メトロポリタン美術館など。

美術展でも実物を目にする機会が少ない、実は希少な作品です。

切手

今回は作品の見所をご紹介しながら、その魅力と人気の秘密に迫ります。

最先端の流行

最新ファッションの市松模様の着物

この作品で真っ先に目に入る華やかな市松模様の着物。そして少女が手にしているビードロ。これらは当時の最先端の流行でした。

着物は歌舞伎役者の佐野川市松が身につけたことから評判となった模様。

<最新ファッションの市松模様の着物>

一方、ビードロは、別名をポッペンとも呼ばれるガラスで出来た舶来品の玩具。既に海外からの新しい風が庶民にまで伝わり出した時代の空気を感じさせます。

雑誌もテレビもない時代に、一番新しい「今」を伝えた浮世絵。
その当時の新鮮な勢いが、今なお色褪せない魅力となって人を惹きつけるのかもしれません。

ビードロは珍しい舶来品のガラスの玩具
<ビードロは珍しい舶来品のガラスの玩具>

モデルは人気の町娘

あどけなく初々しい、巷で評判の町娘

この絵のモデルとなっているのは高名な遊女ではなく市井の町娘。振り袖姿から分かるとおり、15歳以下の未婚のまだ若い少女です。そのためか表情も仕草もどこか初々しく、色っぽさよりもあどけない愛らしさが目立ちます。

最新の流行を身につけちょっと気取ってみせる少女は小粋ながらも微笑ましく、その爽やかな印象こそがこの作品が老若男女問わず愛される理由といえるでしょう。

<あどけなく初々しい、巷で評判の町娘>

 

ブロマイドのような美人画

前回ご紹介した「雪中相合傘」でお馴染みの鈴木春信以降、多色摺りの美人画は背景の中に全身像の美人を描くスタイルが定番でした。その中で、日本人形のように華奢で繊細な春信美人や、鳥居清長の健康的な八頭身美人といった様々なタイプの美人が描かれてきました。

鈴木晴信「雪中相合傘」 鳥居清長「雨中湯帰り」 喜多川歌麿「ビードロを吹く娘」
<お人形のように小柄で華奢な春信美人> <スタイルの良い八頭身の清長美人> <クローズアップしたブロマイド的な表現>

ところが歌麿はあえて全身ではなく美人の顔のアップを描くことで、全く新しい表現を生み出しました。背景をなくし人物だけを大きく取り上げたブロマイド写真を思わせる描き方です。スポットライトをあてたように画面の中に浮かび上がる美人の存在感に当時の人々は驚き、同時に憧れの美人の顔をもっと近くで見たいという願いを叶えてくれるものとして、この新しい美人画を歓迎したことでしょう。

今まではと違う新しい表現方法で一世を風靡し、歌麿は美人画の第一人者となりました。
この新たな表現のために凝らされた技と工夫とは!?

次回はアダチ版画ならではの制作の視点から、その秘密に迫ります!

喜多川歌麿 「ビードロを吹く娘」 商品詳細はこちら >>

品質へのこだわり

品質へのこだわり

アダチの浮世絵は、手にして初めて分かる、熟練の技術と日本の伝統が詰まっています。

製作工程

制作工程

一切機械を使うことなく一枚一枚職人の手仕事により丁寧に作られている木版画です。

厳選素材・道具

厳選素材・道具

江戸当時の風情を感じられる当時の浮世絵の再現にこだわり、厳選した素材と道具を使用。

職人紹介

職人紹介

最高の作品を創り出すために、日々技術の研鑽を積む熟練の職人たち。

浮世絵の基礎知識

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意外と知らない?浮世絵の世界。浮世絵の基礎知識をご紹介。