アダチセレクト「話題の一枚。」~葛飾北斎「罌粟」vol.2~

2014.09.19

アダチセレクト「話題の一枚。」

 

先週末の13日(土)から東京・上野の森美術館で始まった、ボストン美術館の名品を集めた北斎展。週末は、入場制限もかかるほど連日大盛況とのこと。今回「話題の一枚。」でも取り上げている「罌粟」を含む大判サイズの花鳥画シリーズは全10枚のうちの9枚が揃い、特に本図はまるで摺りたてような色鮮やかな状態とのことで、必見の価値あり。

今回のコラムでは、風や空気、時間といった目に見えない動きのあるものまでをも表現しようとした北斎の才能について迫ります!

まさに江戸のデザイナー!?北斎流のデザインとは?

浮世絵は、大量生産の商業印刷として木版で作られていたため、制作費に直接影響のある板の枚数や摺る回数がなるべく少なくなるように版下絵を描いていました。つまり、版元からの注文を受けた北斎は、一定の制約の中で作品を描くことを常に求められました。

現代に置き換えると絵師は画家というより、依頼主の要望に沿って制約の中で制作する"デザイナー"に近いと言えます。英語の書物では"designed by Hokusai"と訳されているのも納得です。

ここで、水の流れを巧みに表現し北斎の非凡なデザインセンスを垣間見れる「諸国滝廻り」シリーズの一図、「下野黒髪山きりふりの滝」を見てみましょう。

下野黒髪山きりふりの滝

水が流れ落ちる途中、岩に当たって霧のような飛沫から"霧降の滝"と呼ばれる所以とされたそうです。

勢いよく幾筋にも砕け分かれて、岩肌を這うように流れ落ちる水が、北斎の手にかかると見事にデザインされ、より一層印象強いものになっています。

<北斎流にデザインされた水の流れ>

 

罌粟

では、「罌粟」の場合はどうでしょう。

強風にあおられしなやかになびく罌粟の花は、ただ単に見たまま写生したわけではなく、画面全体を使ってダイナミックに描かれています。北斎は本図の中に、目に見えないはずの"風"をデザインし、見事に表現したと言えるでしょう。

<目に見えない“風”を感じさせる北斎流のデザイン>

 

偶然か?意図的か?ビックウェーブが隠れている!?

水色一色の背景に画面いっぱいに揺れる罌粟の花だけを配した構図。風に吹かれて揺れる姿とはいえ、不自然とも言えるかたちで描かれています。北斎はなぜこのように描いたのでしょうか。

画面右上部に大きく空間を持たせた配置、どこかで見たことのある構図ではないでしょうか。ではそのままの縮尺で、本図と誰もが知る名作「神奈川沖浪裏」を重ねてみましょう。


なんということでしょう!腰をくねらせた「罌粟」の花と「神奈川沖浪裏」の大波がこんなにもピッタリと重なるくらい同じ構図がとられています。この二図に共通するダイナミックな構図は、風や波といった動きのあるものを表現するのに最適だったのではないでしょうか。


罌粟

前回のコラムでもご紹介した作品によって描き分ける北斎の"静"と"動"の表現。赤富士が堂々とそびえる「凱風快晴」が"静"ならば、大迫力の波を描いた「神奈川沖浪裏」は"動"。

特に水や風、波など留まることのない"動"の一瞬を切り取り、表現することに長ける北斎ならではの構図への探究心が「罌粟」を生み出したのではないでしょうか。

 

次回は、木版画制作の技術をご紹介しながら、アダチ版画ならではの制作の視点から本図の魅力をご紹介します。
乞うご期待!

葛飾北斎「罌粟」 商品詳細はこちら >>

品質へのこだわり

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アダチの浮世絵は、手にして初めて分かる、熟練の技術と日本の伝統が詰まっています。

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厳選素材・道具

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江戸当時の風情を感じられる当時の浮世絵の再現にこだわり、厳選した素材と道具を使用。

職人紹介

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浮世絵の基礎知識

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