アダチセレクト「話題の一枚。」~葛飾北斎「罌粟」vol.3~

2014.10.10

アダチセレクト「話題の一枚。」

 

風になびく罌粟の花を絶妙な筆致で表現した北斎。目に見えないものを描くことに北斎がいかに試行錯誤をして本図を完成させたかということについて、2回にわたってご紹介してまいりました。

最終回の今回は、アダチ版画ならではの制作の視点から、この作品の魅力を左右するといっても過言ではない職人の技術、特に摺りにおける見どころをご紹介してまいります。

罌粟を引き立てるシンプルな背景に秘密が?

構図に特徴があるものの「ぼかし」などいわゆる技法的なものは、特に見当たりません。そのような中で今回ご注目いただきたいのが罌粟の花を引き立てている薄い藍一色の背景です。

このなんの変哲もない部分に色を平らにそして綺麗につけるのには摺師の技術、そして、ある秘密が隠されているのです。
その秘密とは一体?

罌粟

 

摺師の強力サポーター

浮世絵版画は、山桜に彫られた版木に水性の絵具を馴染ませ、和紙を置いて馬連で摺っていきます。

私たちが使う和紙・奉書は特に繊維が長くその繊維の中に絵具を摺りこむことで独特の発色が生まれます。つまり、摺師にとってきちんと摺りこむことがとても重要なことなのです。
本作品の背景は「つぶし」と言われ、面積も広く、より一層力が必要な部分です。

<罌粟のバックの部分「つぶし」を摺る>

 

まず、摺師の作業風景をご覧ください。

普通の平らな机と異なり版木がのっている摺台が前方へ傾いていることに気づかれるのではないでしょうか。
これは、手前から奥へいくほど全身の力が強く伝わるような構造になっているのです!この摺台の傾きが江戸時代から変わらず摺師をサポートしてくれているのです。

摺台
<摺台が前に傾いている状態>

 

馬連

そして、もう一つ摺師をサポートしてくれるとっても重要な道具があります。
それは、皆さんお馴染みの馬連です。

馬連は摺師をどのようにサポートしているのでしょう?

<プロの摺師は数枚の馬連を常時使い分ける>

 

摺師は、何面かの馬連を普段から使い分けています。外見はどれも同じように見えるのですが、実は竹皮に包まれた中味が違うのです。

馬連の中味は写真のようになっています。
これは、竹の皮を裂いて紐状にしたものをさらに編んだものが芯となっていて、芯の編み目が太いか細いかで使い分けているのです。

芯
<馬連の「芯」左は細く、右は太いもの>

強い力が必要な本作品「罌粟」の背景を摺る時には、太い芯の馬連を使うというわけです。

<全身の力を馬連に伝えて、きっちりと摺り込んでいる様子>

 

このように摺台そして馬連という江戸時代の職人達の英知と技が一つになって、「罌粟」の花を引き立ててくれる背景が生まれたといえますね。

まさに、絵師北斎の構図力と摺師の技が合わさることで生まれた名品と言って良いでしょう。

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品質へのこだわり

品質へのこだわり

アダチの浮世絵は、手にして初めて分かる、熟練の技術と日本の伝統が詰まっています。

製作工程

制作工程

一切機械を使うことなく一枚一枚職人の手仕事により丁寧に作られている木版画です。

厳選素材・道具

厳選素材・道具

江戸当時の風情を感じられる当時の浮世絵の再現にこだわり、厳選した素材と道具を使用。

職人紹介

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最高の作品を創り出すために、日々技術の研鑽を積む熟練の職人たち。

浮世絵の基礎知識

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