アダチ版画 浮世絵こぼれ話 ~第1回「日本橋 朝之景」~

2015.01.01

アダチ版 浮世絵こぼれ話

 

元日は一年の始まり。新しく物事を始めるのには最適の日です。
アダチ版画では本日より昨年一年ご好評を頂いたコラムの枠を更に広げ、装いも新たに新企画「アダチ版画 浮世絵こぼれ話」を始めます。
作品の見どころから豆知識、楽しみ方など、アダチ版画ならではの情報をお伝えしていきたいと思います。


記念すべき第一回となる今回は、今年の「迎春セット」にも入っている歌川広重の傑作「日本橋 朝之景」をご紹介します。

魚河岸の賑やかな喧騒が響いてくる早朝、日本橋を越え江戸を旅立とうとする大名行列を描いた本図は広重の代表シリーズ「東海道五十三次」の始まりの図として知られています。

旅の出発を描いているところから事始めや門出のお祝いに大変喜ばれるこの作品で、アダチ版画の新企画もスタートしたいと思います。

日本橋 朝之景

 

旅の始まりは日本橋から

江戸日本橋

【鑑賞豆知識】日本橋
江戸時代当時の日本橋はただの川を渡るための橋ではありませんでした。
幕府が整備した東海道、中山道、甲州道中、日光道中、奥州道中の五街道全ての始点として定められた交通の要所であり、江戸城や富士山を望める景観もあいまって江戸屈指の名所でもありました。

<葛飾北斎が描いた「江戸日本橋」(冨嶽三十六景)>

そのため浮世絵の画題にも良く取り上げられ、広重の他にも葛飾北斎を始め多くの絵師が手掛けた日本橋の傑作が残されています。


旅立ちの時間といえば早朝

広重は全55図にもなる「東海道五十三次」を描くにあたり、シリーズが単調にならないよう時間や天候、季節の要素を様々に盛り込みました。それが最も表れているのが空の表現です。

日本橋 朝之景

画面上部に入るシンプルなぼかし。

浮世絵の空の表現は実に簡潔で的確です。この僅かな幅のぼかしが画面全体に奥行きを作り出し、更にその色によって季節や時間を端的に表現しているのです。

例えば同シリーズの傑作「蒲原 夜之雪」。
ここでは黒のぼかしで闇夜の暗さを表現しています。

蒲原 夜之雪
丸子 名物茶屋

また同じく「丸子 名物茶屋」。
こちらは赤のぼかしで麗らかな早春の空を表現しています。


そして本図は「朝之景」の題名が示す通り、早朝の朝焼けの残る青空を表現しています。旅立ちに張り切る背中を後押しするような朝の清々しさが感じられる一枚です。

 

注目の技"一文字ぼかし"

空のぼかしの表現は、画面の上から下へ向かって薄くなるところから通常「吹き下げぼかし」と呼ばれます。
広重はそこにも独自の工夫を凝らしました。

広重の描く空のぼかしと北斎の空のぼかしを比べてみましょう。

  一文字ぼかし   吹き下げぼかし  
  <広重の空のぼかし>   <北斎の空のぼかし>  

いかがでしょうか。広重のぼかしの方が幅が狭くシャープな印象です。
これは「一文字ぼかし」と言い、文字通り一の字を描くように見えるところからそう呼ばれています。通常の「吹き下げぼかし」より画面が引き締まって見え、印象に張りを持たせています。

【ココが見所!】
当時の旅は今ほど簡単なものではなく、公的な参勤交代や伊勢参りなどの理由が なければ幕府の許可が降りませんでした。徒歩で行くしかない旅路も今よりずっと過酷だったことでしょう。それだけに人々には一層遠い地への憧れがあり、その期待に応えるように描かれた東海道五十三次シリーズは、広重の代表作と言える大ヒットとなりました。その始まりである本図に描かれた旅立ちの朝の緊張感と高揚感こそ、当時の人々の憧れを掻き立て、現代の私たちにも訴えかけるこの作品の一番の魅力と言えるでしょう。


2015年新春スタート、アダチ版画の新企画「浮世絵こぼれ話」 は、これからも様々な視点から浮世絵の魅力をご紹介して参ります。 次回も盛りだくさんの内容でお送りしますので、どうぞお楽しみに!

歌川広重「日本橋 朝之景」 商品詳細はこちら >>

品質へのこだわり

品質へのこだわり

アダチの浮世絵は、手にして初めて分かる、熟練の技術と日本の伝統が詰まっています。

製作工程

制作工程

一切機械を使うことなく一枚一枚職人の手仕事により丁寧に作られている木版画です。

厳選素材・道具

厳選素材・道具

江戸当時の風情を感じられる当時の浮世絵の再現にこだわり、厳選した素材と道具を使用。

職人紹介

職人紹介

最高の作品を創り出すために、日々技術の研鑽を積む熟練の職人たち。

浮世絵の基礎知識

浮世絵の基礎知識

意外と知らない?浮世絵の世界。浮世絵の基礎知識をご紹介。