【新復刻完成コラム】 錦絵の祖、鈴木春信「夜の梅」vol.2

2015.12.04

新復刻完成!鈴木春信「夜の梅」

 

このたび新作が完成し、大変ご好評いただいている鈴木春信の「夜の梅」。

闇夜に梅と美人の姿が浮かび上がる幻想的な情景を描いた、ファンに人気の高い作品です。ちょうど、これからの季節に飾って頂ける梅をモチーフにした作品ということもあって、早速のご好評を頂いています。

今回はそんな「夜の梅」の見どころを、アダチ版画ならではの制作の視点からご紹介していきます。

鈴木春信「夜の梅」
鈴木春信 「夜の梅

制作から見る――「夜の梅」の見どころ

◎ 見どころ、その1――和紙の『白』

本図でまず目に入るのは、漆黒の闇夜に対比するように浮かぶ白梅の花と美人の姿。

黒一色の背景に映える梅の花や美人の肌の白さを、春信は絵具を使わず和紙の地をそのまま生かして表現しています。ふんわりとした柔らかい質感と自然な色合いは、和紙だからこそ出せる独特の風合いです。

和紙 和紙
<和紙の地を生かした柔らかい白の表現>


◎ 見どころ、その2――『空摺』の質感

「空摺」とは版木に色を付けず、圧を掛けて摺ることで紙に凹凸をつける伝統の技法。

本図では、美人の着物の白地や足袋の輪郭を、この空摺で表現しています。空摺の立体感が着物の厚みや質感を感じさせ、墨で輪郭線を描くよりも柔らかみのある印象を与えています。

空摺 空摺
<白地に凹凸で質感を表現する「空摺」>


色彩だけでなく質感までも含めた表現を追求した春信。そこからは、素材や技術を駆使し、より美しい作品を作ろうとする強いこだわりが感じられます。

そんな春信のこだわりが詰まった作品を復刻するにあたって、職人たちはどういった点に注目し、またこだわったのでしょうか。職人たちの声を聞いてみました。


職人たちのこだわり

◎ 彫師のこだわり:『梅の花』

       
  新實

彫師・新實

「梅の花は、背景の墨の板を花の形に抜いて、紙の地の白が残るようにしています。背景の板は面積が大きく、強く圧をかけて摺るため、花びらの部分が墨の色で潰れないようほんの少しだけ大きめに抜いてあります。摺師が摺るときの力加減を考えながら彫るのがポイントだね。」

 
       
  彫り風景 版木 夜の梅  
  <摺師の力加減を考え、花の形を大きめに抜く>  
         


◎ 摺師のこだわり:『美人の着物』

       
  摺師・仲田 摺師・仲田

「美人の着物は一度薄い色で摺って、そこにもう一度色を重ねる二度摺りをしているよ。こうすることで春信特有の淡い色合いもぼんやりせず、色に厚みが出てくるんだ。」
 
       
    摺り風景 夜の梅    
<淡い色合いにも厚みを出す二度摺り>
           


作品の魅力を最大限に引き出すため、アダチの職人たちも技を尽くし創意工夫をしていました。実際に作品をご覧の際は、ぜひ職人たちの技にもご注目ください。

 

世間を驚かせた多色摺りの「錦絵」を完成させた春信とその周りの職人たちは、シンプルな表現の中にひと手間かけることにより、多色ということだけにとどまらない質感にもこだわりをみせていたことがわかりますね。彼が「錦絵」を誕生させることが出来たのは、より優れた表現への飽くなき探求心があったからこそではないでしょうか。

あらためて本図を見てみれば、繊細で幻想的な世界の中に、春信の作品に掛ける秘めた情熱が感じられるような気がします。

単に色彩の美しさだけではない描き手の熱意こそ、かつて一世を風靡した春信の美人画の魅力と言えるでしょう。

鈴木春信「夜の梅」


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品質へのこだわり

品質へのこだわり

アダチの浮世絵は、手にして初めて分かる、熟練の技術と日本の伝統が詰まっています。

製作工程

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厳選素材・道具

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江戸当時の風情を感じられる当時の浮世絵の再現にこだわり、厳選した素材と道具を使用。

職人紹介

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浮世絵の基礎知識

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