江戸時代、庶民に愛され大流行した浮世絵。
今なお、日本文化の代表として世界中の人々に高く評価されています。近年、パリでは北斎や国芳の大回顧展が開催され、日本各地でも浮世絵の展覧会が数多く開催されています。
今回アダチ版画では、現在開催中のサントリー美術館『広重ビビッド展』や太田美術館『広重展』でも話題の歌川広重最晩年のシリーズ「名所江戸百景」の作品や葛飾北斎の最高傑作「神奈川沖浪裏」など、浮世絵が世界的に評価される礎となった「ジャポニスム」に関係の深い名作12点を厳選したセット「モネとゴッホが愛した UKIYO-E ベストセレクション」をご紹介いたします! |
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<アダチ厳選の「UKIYO-Eベストセレクション」> |
ゴッホが惚れ込んだUKIYO-E
明治期に入り、海外に渡った日本の美術工芸品が特にヨーロッパで高い評価を受け「ジャポニスム」と呼ばれる一大ムーブメントが起こりました。開国後、日本の陶器を海外に送る時の梱包材として使われていた浮世絵に当時の西洋の人が驚き、高く評価したというエピソードを聞いたことがある方も多いかと思います。
本格的には、1862年にロンドンで開かれた万国博覧会で初めて浮世絵が世界にお披露目されたそうです。その頃から、海外の上流階級の人々が浮世絵を評価し、コレクションし始めるようになると、彼らに浮世絵を販売する商人も現れます。その結果、大量の浮世絵が海外へ渡ることとなりました。
このことをきっかけに、浮世絵は多くの芸術家に影響を与えていきました。
■ 浮世絵に魅了された画家・ゴッホ
とりわけ、浮世絵に影響を受けたとされる芸術家として有名なのが、後期印象派の画家ヴァン・ゴッホです。 1853年にオランダで生まれたゴッホは、独学で絵を学び、32歳でパリに移り住んだ際に出会ったのが浮世絵でした。
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ゴッホは、広重最晩年のシリーズ「名所江戸百景」の亀戸梅屋舗を『花咲く梅の木』、大はしあたけの夕立を『雨の大橋』というタイトルでそれぞれ模写作品を残しています。 |
左/亀戸梅屋舗
右/大はしあたけの夕立 |
美術の世界において「模写」とは、ただ単に写すということではなく、作風や作者の制作意図を理解するために用いられると言われています。では、ゴッホは広重の名作を模写することで、何を得ようとしたのでしょうか。
■ 西洋にはない広重独特の構図
広重の作品に見られる特徴的な描き方ですが、「亀戸梅屋舗」のように近景を大胆にクローズアップして描き、遠景と対比するように画面が構成させています。
また、大空を羽ばたく鷲がまるで地上の獲物に狙い定めているかのような姿を俯瞰で描いた「深川洲崎十万坪」など、写実的な世界を描くことが主流であった西洋の人々とって、それまでにはなかった広重独特のダイナミックな構図が、ゴッホをはじめ印象派の画家たちを魅了したと言えます。 |
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広重 「深川洲崎十万坪」 |
独学で絵を学んだゴッホにとって、それまでになかった構図や浮世絵独特の表現方法など非常に得ることの多い新鮮なものだったのではないでしょうか。それゆえ、400点以上ともいわれる浮世絵のコレクションを所有し、数多くの模写作品を残したとされています。
一大ムーブメントとなったジャポニスムの中でも今なお、日本文化の代表として世界中の人々に愛される浮世絵。
次回は、印象派を代表する画家・モネが愛した浮世絵の魅力について迫ります。
「モネとゴッホが愛した UKIYO-E ベストセレクション」 商品詳細ページはこちら >>