【印象派が愛した浮世絵】 vol.3 世界を魅了した 北斎のUKIYO-E

2016.06.03

モネとゴッホが愛したUKIYO-Eベストセレクション

 

浮世絵が世界的に評価される礎となった「ジャポニスム」という一大ムーブメント。 中でもモネとゴッホという日本人にとっても身近な印象派の画家と浮世絵との関係について2回にわたり紹介してまいりました。モネやゴッホ以外にも浮世絵から影響を受けた芸術家は多く、印象派の音楽家として有名なドビュッシー、そして、ジャポニスムに原点をもつアール・ヌーボーの代表エミール・ガレなどがいます。

モネとゴッホが愛したUKIYO-Eベストセレクション
<アダチ厳選の「UKIYO-Eベストセレクション」>

「モネとゴッホが愛した UKIYO-Eベストセレクション」の魅力をお伝えするコラム最終回となった本コラムでは、ドビュッシー、ガレが愛した北斎の描いた浮世絵の魅力に迫ります。


■ 名作曲家にも影響を与えた 世界で最も有名な日本の絵「神奈川沖浪裏」

北斎の描いた冨嶽三十六景の一枚「神奈川沖浪裏」。現在の横浜本牧沖から富士山を眺め描いたこの作品は、静と動が交錯するダイナミックな構図や当時流行した舶来の絵具プルシアンブルーを多用した色彩に多くの人々が魅了され、今なお世界中で高い評価を受けています。

神奈川沖浪裏
葛飾北斎「神奈川沖浪裏


特に、モネやゴッホと同時代を生きた印象派の音楽家ドビュッシーは、この作品からインスピレーションを受けて交響詩「海」を作曲したといわれています。

神奈川沖浪裏」と歌麿の美人画が壁にかかった自室でストラヴィンスキーと撮った写真なども残っており、日常的にこの作品に触れていた事がうかがえます。そして交響詩「海」の初版本には、「神奈川沖浪裏」が使われています。


■ 西洋の自然観に影響を与えた 北斎の花鳥画

この世の森羅万象を描き尽くそうとした北斎は、冨嶽三十六景をはじめとする風景画にとどまらず、草木や昆虫、小動物を描いた花鳥画の世界でもその卓越した才能を発揮しています。

あやめにきりぎりす

ピント張り詰めた空気の中に、さかさまにとまったきりぎりすの自然の姿を巧みに描いた「あやめにきりぎりす」。

葛飾北斎「あやめにきりぎりす

秋風にたなびく桔梗に止まろうとする蜻蛉の様子をリアルに表現した「桔梗に蜻蛉」。 北斎は、花や昆虫を描写するだけでなく、自然の中での風・空気・時間までを表現しようと試みています。

桔梗に蜻蛉
葛飾北斎「桔梗に蜻蛉

ジャポニスムというムーブメントが生まれた19世紀中頃まで西洋では、キリスト教の影響が強く宗教画・神話画・歴史画などが主流で、自然を単独の絵画の主題とすることはほとんどなかったといわれています。
そのような背景の中北斎の描いた花鳥画は、西洋の芸術家たちにとって新しい表現主題となり多大な影響を与えたようです。

中でも影響を強く受けたのは、19世紀末から20世紀初頭にかけてヨーロッパに流行した装飾様式、アールヌーヴォを代表するのがフランスのガラス工芸家エミール・ガレです。


■  アール・ヌーボーに影響を与えた 蜻蛉島(あきつしま)・日本の浮世絵

草木や虫をモチーフにし、流れるような曲線がその特徴でもあるアール・ヌーボー。中でもガレが30年にわたり制作活動の中でたびたびモチーフに使ったのが蜻蛉(トンボ)。蜻蛉は、日本の花鳥画では秋の風物詩として頻繁に登場し、北斎漫画や北斎の花鳥画「桔梗に蜻蛉」にも描かれています。

桔梗に蜻蛉

北斎漫画

ガレの蜻蛉をモチーフにしたガラス器に

うちふるえる蜻蛉を愛する者これをつくる エミール・ガレ

と銘を刻んだものがあるそうです。今回紹介した「桔梗に蜻蛉」を実際に見たという史実はないようですが、この作品はガレに多大な影響を与えた浮世絵の粋が凝縮された一枚といえるでしょう。

<「北斎漫画」より>

国のかたちが蜻蛉の交わる形に似ていることから「蜻蛉島(あきつしま)」という古称をもつ日本。
そのような背景も手伝ってか、ジャポニスムが広がる中、日本美術愛好家たちは日本の象徴として「蜻蛉」を捉えていたとも言われています。

これまで3回にわたって、幕末以降ヨーロッパでおきたジャポニスムというムーブメントと浮世絵との関係。特に、モネ・ゴッホ・ドビュッシー・ガレの4人の芸術家を取り上げましたが、当時浮世絵に影響を受けた芸術家は、枚挙に暇がありません。今回、アダチ版画が厳選した「モネとゴッホが愛した UKIYO-E ベストセレクション」の全12図をご覧いただき、当時ジャポニスムに沸いたヨーロッパの人々の熱狂ぶりを感じていただけば幸いです。

「モネとゴッホが愛した UKIYO-E ベストセレクション」 商品詳細ページはこちら >>

品質へのこだわり

品質へのこだわり

アダチの浮世絵は、手にして初めて分かる、熟練の技術と日本の伝統が詰まっています。

製作工程

制作工程

一切機械を使うことなく一枚一枚職人の手仕事により丁寧に作られている木版画です。

厳選素材・道具

厳選素材・道具

江戸当時の風情を感じられる当時の浮世絵の再現にこだわり、厳選した素材と道具を使用。

職人紹介

職人紹介

最高の作品を創り出すために、日々技術の研鑽を積む熟練の職人たち。

浮世絵の基礎知識

浮世絵の基礎知識

意外と知らない?浮世絵の世界。浮世絵の基礎知識をご紹介。