山々の緑が、赤や黄色といった秋色に段々と染まりゆくこれからの時季。
このたび、アダチ版画では紅葉に色づく秋の名勝を描いた歌川広重の傑作「甲斐 さるはし」を新たに復刻いたしました。今回は、新作復刻完成を記念して、本作の魅力について迫ります!
紅葉に色づく秋の名勝「甲斐 さるはし」
日本三大奇橋にも数えられる名勝・猿橋の秋の絶景を描いた本作は、紅葉に彩られた橋を見上げるような構図で、人工的な橋の構造と自然が生み出した荒々しい岩の表面や渦巻く川の流れを対照的に描写しています。
真っ赤に彩られた紅葉の色彩が目に映える、秋の風情満載な作品です。 |
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■ 名勝・猿橋とは?
現在も山梨県大月市を流れる桂川に架かる橋で、江戸時代、甲州街道沿いの宿場にあったため人の往来が多く、広重も甲斐を訪れた際にスケッチを行ったと言われています。
岩国の錦帯橋(山口県)、木曽の桟橋(現存せず)と共に「日本三大奇橋」の一つとされています。 |
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歌川広重 「甲斐 さるはし」 |
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橋脚を使わずに、両岸から張り出した4層のはね木によって支える構造まで細密に描写しています。 |
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真っ赤に染まる紅葉に彩られた猿橋。橋上から望む紅葉は、今と変わらぬ絶景がうかがえます。 |
【Pick up!】 六十余州名所図会
代表作「東海道五拾三次」を始めとする全国各地の風景を描いてきた歌川広重が晩年に手がけた、日本全国を「五畿七道」に区分していた頃の全国各地の名所を描いたシリーズ。名所の四季折々の風景を季節感たっぷりに描いています。 |
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今回新たに復刻した「甲斐 さるはし」の他にも名勝・猿橋を描いた浮世絵は数多く残されています。その中でも名作として知られているのが、同じく広重が描いた竪二枚の「甲陽猿橋之図」。
こちらも「甲斐 さるはし」同様、川辺から猿橋を見上げるような構図で、遠景に満月を望み叙情溢れる作品です。当時から、名所として訪れる人が多かった猿橋の人気ぶりが垣間見れます。
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歌川広重 「甲陽猿橋之図」 |
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名所絵の巨匠・広重が描く構図の工夫
■ 風景画の常識を破る縦長の構図
西洋画もそうですが、風景を描いた浮世絵の多くは、横長の画面に広く描くのが定番といえるのではないでしょうか。広重も30代に描いた代表作「東海道五拾三次」では、横長に描いています。
しかし、本作では描きたい部分を限定して、縦長の画面に風景を切り取ることで存在感を強調し、名勝を下から望む広重ならではの自在の視点を組み合わせることによって、インパクトのある構図を作り出しています。その構図にかける工夫に、広重が"名所絵の巨匠"と言われる所以があるのではないでしょうか。
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横長の画面に描かれた
東海道五拾三次「日本橋 朝之景」 |
六十余州名所図会「甲斐 さるはし」 |
これから迎える紅葉の季節にぴったりの新復刻作品「甲斐 さるはし」。
次回は、制作の視点から本作の魅力について迫っていきます!
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