【新復刻完成記念コラム】 紅葉に色づく秋の名勝 「甲斐 さるはし」 vol.2

2016.10.17

新作復刻完成

 

秋も深まり、山々の紅葉が美しく色づきはじめる時季。
このたび、アダチ版画では紅葉に色づく秋の名勝を描いた歌川広重の傑作「甲斐 さるはし」を新たに復刻いたしました。

アダチ版画は、江戸の庶民と同様に現代の方々にも浮世絵の摺りたての鮮やかさや質感を楽しんでいただくためにオリジナルの浮世絵に忠実に、そして初摺といわれる絵師と版元の意向が詰まった作品を参考にしながらこれまで、1,200種を超える復刻版を制作してまいりました。
そして、年に1回程度ではありますが、現在でも新しい作品の復刻をしています。

江戸時代と同じ素材を使用し、脈々と受け継がれる知識と技に基づいた職人たちの高い技術をもって復刻することでアダチ版画だからこその質の高い作品を皆様にお届けすることを目指しています。

復刻記念コラムvol.2の今回はそんなアダチの誇る、現代の職人たちが技術を結集し復刻した「甲斐 さるはし」を制作の視点からご紹介していきます。

 

「甲斐 さるはし」を彫る・摺る


分業制の浮世絵の制作において、絵師・広重が描いたのは、「版下絵(はんしたえ)」と言われる輪郭線だけ。

彫師と摺師は200年の時を越え、広重が線にこめた思いをくみ取り作品を完成させていきます。そこには職人たちの密かなこだわりと工夫があります。 アダチ版画の彫師・摺師に今回の「甲斐 さるはし」制作のポイントを訊ねてみました。

版下絵
歌川広重 「甲斐 さるはし」版下絵

 

◎彫師・新實に聞く

     

 

彫師・新實

「作品の復刻をするには、描かれている線をまず自分のものにしなければいけないからね。まず複数のオリジナル作品を丹念に調べて、線を理解して自分の中に落とし込む作業から始めるんだよ。

特に今回のさるはしは紅葉の部分の主線がみえづらくて、多くのオリジナルを見て、それぞれのオリジナルの線を自分の中で重ね合わせ、つなげていってはじめて線のタッチを理解することができた。
これは多くのオリジナルについての資料を持つアダチ版画にいるからこそできたことだと思うよ。色版を作るときは、さるはしのオリジナルは色が曖昧な部分が多かったので、どの色で表現されているかを判断するときは気を遣ったね。」

  彫り風景  
  <荒々しい線、緩やかに流れる線。広重の想いを丹念に彫り上げていく。>  
     

 

◎摺師・山本に聞く

     

摺師・山本

「色のバランスが絶妙な作品で、特に岩の肌の色づくりにはこだわりましたね。黄、緑、茶の要素がまじりあったような色で、明るくすると深みがでないし、色を落としすぎても暗くなってしまうので調整するのに気を遣いました。

あとはメインであるさるはしと紅葉に加えて、左右にそびえる岩、間を流れる川、遠景の山と民家...と要素が多くて、単純な遠・近の二面で表現する遠近感とは違う難しさがありました。
特に岩のすきまから覗く遠景を表現するには岩肌が目立ちすぎてもいけないので、いいバランスになるように丁寧に摺り上げました。」

摺り風景
  <ばれんで和紙の繊維の中に摺りこまれる鮮やかな水性の絵具。>  
     

 

甲斐 さるはし

江戸時代の絵師・広重と現代の職人の感性と技術が合わさることで、傑作「甲斐 さるはし」が江戸時代当時に人々が楽しんだ鮮やかさ細やかさそのままによみがえりました!

みなさまも是非、現代に復刻された秋の傑作「甲斐 さるはし」をお手に取ってお楽しみください。



新復刻完成!紅葉に色づく秋の名勝 「甲斐 さるはし」 商品詳細ページはこちら >>

品質へのこだわり

品質へのこだわり

アダチの浮世絵は、手にして初めて分かる、熟練の技術と日本の伝統が詰まっています。

製作工程

制作工程

一切機械を使うことなく一枚一枚職人の手仕事により丁寧に作られている木版画です。

厳選素材・道具

厳選素材・道具

江戸当時の風情を感じられる当時の浮世絵の再現にこだわり、厳選した素材と道具を使用。

職人紹介

職人紹介

最高の作品を創り出すために、日々技術の研鑽を積む熟練の職人たち。

浮世絵の基礎知識

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意外と知らない?浮世絵の世界。浮世絵の基礎知識をご紹介。