【お部屋で楽しむお月見コラムvol.1】意外と知らない!?お月見の基礎知識

2017.09.01

月17

 

1年で最も月がきれいに見える秋の季節がやってきました。

澄んだ空気に浮かぶ月はひときわ美しく、「お月見」が存分に楽しめます。その姿は浮世絵にも多く描かれており、現在も「お部屋で楽しむお月見 秋夜の浮世絵」で数々の月の名作をご紹介しています。
日本の秋の風物詩ともいえる行事のお月見を、ぜひ月の浮世絵の傑作と一緒に楽しんでいただければと思います。



しかし、日本人にとってなじみのある"お月見"ではありますが、その由来ややり方は意外にご存知ない方も多いのではないでしょうか。今回は、月の浮世絵の魅力とともに、改めて"お月見"についてご紹介します。


平安時代から続く!?日本の伝統行事


お月見といえば、一般的には旧暦の8月15日である十五夜に行います。旧暦の秋であった7~9月のちょうど真ん中にあたるため「中秋」とも呼ばれ、その夜の月を「中秋の名月」としてお月見で楽しむのです。現代の新暦では旧暦の8月15日が毎年ずれるため、9月中旬~10月初旬の間で毎年変わります。今年は10月4日となっています。

もともと、お月見の風習は平安時代頃から江戸時代前までは貴族など高い身分の人々が行っていたものでした。それが、江戸時代になると庶民の間でも盛んに楽しまれ、現代まで続く伝統的な秋の行事となったのです。人々が月を楽しむ姿は浮世絵にもたくさん描かれています。


本図は歌川広重「玉川秋月」です。

川に舟を浮かべ、月を見上げてお月見を楽しむ人の姿がみえます。
その芸術性の高さで広重の最高傑作に数えられる「江戸近郊八景」シリーズの中の一図で、元は一般の売り物ではなく、狂歌仲間の配り物として描かれた特注品で非常に手の込んだつくりをしています。
空の余白には三首の狂歌が詠まれていて、趣ある叙情豊かな秋の風情をより感じることができます。

 

いつまでも見む入方の山つくる ちりだにすへぬ玉川の月
国分寺布目瓦はまつたくて 光くたくる玉川の月
大江戸の水際たちて照月の 雪の白布さらす玉川

生 花 斎
余刀亭片業
養老人滝成

 

満月は銀摺で仕上げられており、美しく幻想的な月の光が表現されています。

川に浮かべた舟から月を眺める人の姿も描かれ、江戸っ子のお月見の楽しみ方が垣間見れます。

 

当時水辺でのお月見というのは特に人気があり、直接月を眺めるだけではなく川や湖などに映りゆらめく月を愛でるというのが粋とされていました。舟の上で酒を酌み交わし、本図に書かれたような狂歌を詠んだり、俳句をひねったりしながら水面の月を楽しむのが通な江戸っ子たちの過ごし方だったのでしょう。

浮世絵は江戸の流行に合わせて作られていましたから、水辺の月を描いたものも多くあります。広重の描いた作品からもう一図ご紹介します。



歌川広重「石山秋月

琵琶湖周辺の八つの景勝を取り上げたシリーズ「近江八景」の中の一図で、湖畔に浮かぶ月を描いています。このシリーズは墨絵調で淡い色調が基本となっているため、本図も色数はあまり用いていません。
それがかえって湖畔を照らす月光の明るさを強調して、静かな秋の空気が伝わってくるようです。岩山の上に立つのは石山寺で、日本三大名月鑑賞地にも数えられています。

 

お月さまに感謝を込めてお供えを!食べ・飲み・飾る お月見の楽しみ方

お月見は、楽しみ方も色々。ただ眺めて月を愛でるのもよいですが、もともとは"お月さまに農作物の収穫の祈願と感謝をする"行事であったので、月見団子をお供えしてもよいでしょう。月見団子は満月のように丸くして、十五夜にちなんで十五個並べるのが基本です。団子の他にもお酒や秋の収穫物として里芋や栗、枝豆などもお供えしてもよいそうで、しばらくお供えしたあとに月を眺めながらそれを食べたり飲んだり、というのもお月見の楽しみのひとつですね。

また食べ物の他に芒(すすき)を飾るのも定番です。姿かたちのよく似た稲穂の代わりとして供え、月の神様=月読神がこれにのりうつると考えられていました。お月見といえば芒、というイメージを持っているかたも多いのではないでしょうか。

浮世絵にも、芒は月と一緒によく描かれています。

左図は小松軒百亀「月と芒に雁」です。
芒の上には雁が飛んでいます。

満月が秋霞の向こうにうっすらと静かに浮かんでいて秋の情緒たっぷりです。

 

秋の風雅な行事であるお月見。浮世絵であれば肌寒い日でも、あいにくのお天気で月が見えなくても、いつでも室内で美しい月を楽しめます。今年は浮世絵でお月見はいかがでしょうか。

品質へのこだわり

品質へのこだわり

アダチの浮世絵は、手にして初めて分かる、熟練の技術と日本の伝統が詰まっています。

製作工程

制作工程

一切機械を使うことなく一枚一枚職人の手仕事により丁寧に作られている木版画です。

厳選素材・道具

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江戸当時の風情を感じられる当時の浮世絵の再現にこだわり、厳選した素材と道具を使用。

職人紹介

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最高の作品を創り出すために、日々技術の研鑽を積む熟練の職人たち。

浮世絵の基礎知識

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意外と知らない?浮世絵の世界。浮世絵の基礎知識をご紹介。