没後160年記念"広重 月の名作撰"コラムVol.1

2018.08.24

没後160年記念 広重 月の名作選

ようやく猛暑も落ち着き、すこし涼しくなってまいりましたね。秋も、すぐそこまでやってきている感じがいたします。浮世絵の世界で秋を楽しむというと、やはり叙情豊かな広重の月の名作が頭に浮かびます。浮世絵のアダチ版画では、9月6日に命日を迎え、今年が没後160年となる広重に注目して、秋にピッタリの「広重月の名作撰」を企画いたしました。本企画を通して広重の魅力に迫ってまいります!

安藤広重、歌川広重、どっち?

お客さまから、たまに受けるご質問で「広重って安藤じゃないの?歌川って書いてあるけど。」ということがあります。まずは、広重の名前の由来についてその出生から辿ってまいりましょう。

広重は、寛政9年(1797)江戸八代洲河岸の定火消同心・安藤源右衛門の子として生まれました。幼少より絵を好み、15歳のときに歌川豊広の門下となったそうです。

以前の教科書には、本名の「安藤広重」が用いられていましたが、最近は絵師として歌川派の広重ということを重視して「歌川広重」でほぼ統一されているようです。

安藤広重、歌川広重、どっち?

広重の風景画は、ここから始まった!「東都名所」

広重は、歌川豊広の門下で、はじめは、美人画や役者絵を描いていました。文政12年(1829)に師匠の豊広が亡くなった2年後、天保2年(1831)広重34歳の時、初の大判サイズの風景画シリーズ「東都名所」を手掛けました。当時広重が「一幽斎(いちゆうさい)」と号していたので「幽斎(ゆうさい)書き東都名所」ともいわれています。10枚揃いで、江戸及びその近郊の風景を描いたシリーズです。残っているオリジナルの数や摺られた具合からみてもかなりの量が摺られたことが想像でき、その人気がうかがえます。

広重の風景画は、ここから始まった!「東都名所」
<東都名所全10図>

俯瞰でとらえた風景に大きな前景を配する大胆な構図と色数を限り独特な配色でつくられたことから、庶民には、とても新鮮で人気も高かったようです。当時流行のプルシアンブルーを空や海に多用するとともに、帯状の紅色の雲がどの図にも配され、本シリーズを象徴する色づかいが見どころでもあります。穏やかで温かみある風景画は、庶民に好感を持って迎えられ、「東海道五十三次」の大作が生まれる下地となったといえるでしょう。
「両国之宵月」でその魅力に触れてみましょう!

近景に大きく両国橋の橋桁をとらえた大胆な構図

近景に大きく両国橋の橋桁をとらえた大胆な構図

紅色の雲 本シリーズ全作品に見られる
紅色の雲
 
  鮮やかなプルシアンブルー
  北斎なども使った流行色。
鮮やかなプルシアンブルー

「東都名所」の中の傑作「高輪明月」

今回は、「東都名所」の中でも月を描いた傑作「高輪明月」をご紹介いたしましょう。

「東都名所」の中の傑作「高輪明月」 「東都名所」の中の傑作「高輪明月」
摺りの風景

日本橋を出発し、品川に近くなると江戸湾の眺望が開ける所が高輪です。江戸の街から海道に出る境に設けられた簡単な関所があり、幕府の禁止事項や罪人の罪状などを記した高札が立てられた場所でもあります。その様子が図の左下の石垣や中央下の高札に見えます。
海岸に沿って茶屋など店が建ち並び、東海道を旅する人や、それを見送る人々、行楽の人々など、人の往来が盛んで、大いに賑わった場所です。湾曲した海岸線、江戸を発ってはじめて広がる江戸湾の眺望を鳥瞰し、雁が群をなして下り、宵の満月が空に光るなど多くの情報を丹念に描写した情景は、広重らしい表現で、細部に配慮することで生まれる臨場感が魅力です。

<ミニ知識>
東都名所の版元 川口正蔵は、国芳の大作「宮本武蔵鯨退治」を後年になって出版しています。版元のプロデュース力にも注目ですね!

安藤広重、歌川広重、どっち?

没後160年記念 広重 月の名作撰

今回は、没後160年を迎える広重の風景画の絵師としての出発点となった「東都名所」に焦点をあてて月の名作をご紹介いたしました。この他にも素敵な月の作品をご紹介しております。是非合わせてお楽しみください。

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品質へのこだわり

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アダチの浮世絵は、手にして初めて分かる、熟練の技術と日本の伝統が詰まっています。

製作工程

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厳選素材・道具

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職人紹介

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