広重と北斎「夏の富士」で藍色対決!

2019.07.13

広重と北斎


現在、アダチ版画では、二大浮世絵師 “広重と北斎の藍色対決”と題して、藍を用いて鮮やかに描き出された夏の情景の名作をご紹介しております。
今回は、「夏の富士山」をテーマに、広重と北斎の浮世絵を見てまいります!

■躍動感あふれる北斎の富士「山下白雨」


北斎の富士といえば、「赤不二」こと「凱風快晴」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
今回ご紹介する「山下白雨」は、「赤不二」と同じく葛飾北斎の代表作『富嶽三十六景』の一図。「赤不二」に対して「黒不二」とも呼ばれる、夏晴れの富士山頂と麓の夕立を一図の中に描き表した作品です。

葛飾北斎 富嶽三十六景 山下白雨

『黒不二』
葛飾北斎「山下白雨
葛飾北斎 富嶽三十六景 凱風快晴

『赤不二』
葛飾北斎「凱風快晴

この二図を並べてみると、構図が似通っていることがわかります。

鱗雲が浮かぶ快晴の空に、山肌を赤く染めた富士をシンプルな配色で描いた「赤不二」は、どっしりと雄大で「静的な富士山」。
一方「黒不二」では、高くそびえたつ富士山の、躍動感が描き表されています。「赤不二」とは対照的な「動的な富士山」という印象を与える作品です。

よく似た構図にもかかわらず、「黒不二」が「赤不二」とは好対照な印象を与えるのはなぜでしょうか。
その秘密は「藍」も用いられている空の表現にありました。


■富士山の高さを可視化!?空の表現に注目!

「山下白雨」には、その名の通り富士山の麓のにわか雨が描かれています。
黒い雲に覆われ、稲妻の走るその下は、きっと真っ暗で激しい雨が降っていることでしょう。
重く立ち込める暗い雨雲は、私たちの生活する地上に近い、比較的低い位置に広がる雲。本図では、富士山の足元に描かれていますね。

葛飾北斎 富嶽三十六景 山下白雨
《黒雲と稲妻》

葛飾北斎 富嶽三十六景 山下白雨
《文様のような積乱雲》

少し上方、富士中腹の山際には、いかにも夏らしい積乱雲が立ち込めています。デザイン的に描かれた入道雲は藍色に和紙の地で摺られ、鮮やかな色合いの夏の空にもくもくと雲が広がる様子が目に浮かぶようです。
積乱雲は、その高さが10kmに及ぶこともある背の高い雲。その頭が山の中腹からひょっこりと顔を出して描かれており、富士山の高さを感じさせます。

さらに上方、急勾配で描かれた富士の山頂近くは快晴。
その空には藍色の吹き下げぼかしが加えられ、画面外への空の広がりも表現されています。

葛飾北斎 富嶽三十六景 山下白雨
《広がりのある空》

快晴の頂上と大雨の麓という天候の差を描くことで、富士山の高さを表現した「山下白雨」。
本図において、北斎は日本人の心象風景でもある夏の空の様子を巧みに描き表し、雲という舞台装置によって鑑賞者に富士山の高さを直感的に伝えることに成功しています。

■見事な対比で描かれた英姿 広重の富士「伊豆の山中」


歌川広重 富士三十六景 伊豆の山中

広重「伊豆の山中
通常価格  20,000円(税別)

限定特価 絵のみ 13,000円(税別)


一方こちらは、広重が北斎の「富嶽三十六景」に対抗して最晩年に描いたとされる「富士三十六景」の一図、「伊豆の山中」。
はっきりとした場所はわかりませんが、箱根峠から三島に至る道すがらだろうといわれています。

少し遠景から、堂々たる富士山を眺めたこの図に描かれているのは、夕暮れに差し掛かろうとする一瞬でしょうか。帰路を急ぐかのように前かがみで歩く人たちの姿も見えます。ひときわ小さく描かれた彼らは、この絵の中では自然の雄大さを引き立てる役割を果たしています。 歌川広重 富士三十六景 伊豆の山中
《小さな人影》

歌川広重 富士三十六景 伊豆の山中
《滝となって落ちる水》

こちらの「伊豆の山中」で最も特徴的なのは、その見事な色遣い。 夏の山の青々とした木々にはまぶしい緑が、滝となって勢いよく流れ落ちる豊かな水の表現には藍のぼかしが用いられています。

山並みの間から見える富士山は和紙の地を活かした白で大きく描かれ、周囲の鮮やかな深緑とのコントラストが富士山の存在感を際立たせます。

歌川広重 富士三十六景 伊豆の山中
《白と緑の美しいコントラスト》

歌川広重 富士三十六景 伊豆の山中
《奥行きの感じられる空》

少し雲がかかった空には、横長に浮かぶ雲を境に藍と赤のぼかしがかけられ、空の高さや奥行きが良く表わされています。


生命力あふれる夏の山と対比させて、静かにたたずむ富士山の英姿を描いた工夫溢れる一枚です。


今回は同じ「夏の富士山」を題材に取っているものの、まったく違った魅力を持つ2図をご紹介いたしましたが、いかがでしたでしょうか。
現在アダチ版画のオンラインストアでは、「広重と北斎"藍色対決"! 藍色遣いで魅せる夏の浮世絵」と題し、藍を用いて鮮やかに描き出された夏の浮世絵をご紹介しております。
「広重と北斎“藍色対決”! 藍色遣いで魅せる夏の浮世絵」はこちら >>


品質へのこだわり

品質へのこだわり

アダチの浮世絵は、手にして初めて分かる、熟練の技術と日本の伝統が詰まっています。

製作工程

制作工程

一切機械を使うことなく一枚一枚職人の手仕事により丁寧に作られている木版画です。

厳選素材・道具

厳選素材・道具

江戸当時の風情を感じられる当時の浮世絵の再現にこだわり、厳選した素材と道具を使用。

職人紹介

職人紹介

最高の作品を創り出すために、日々技術の研鑽を積む熟練の職人たち。

浮世絵の基礎知識

浮世絵の基礎知識

意外と知らない?浮世絵の世界。浮世絵の基礎知識をご紹介。