偶然が生んだ美しい「ベロ藍」

2019.08.10

広重と北斎


アダチ版画では引き続き、藍を用いて鮮やかに描き出された夏の情景の名作たちをご紹介しています。
前回のコラムでは、涼しげな青の浮世絵を大きく発展させた要因としてベロ藍をご紹介しました。今回は、そのベロ藍について詳しくご紹介いたします!

■「ベロ藍」は偶然見つかった!?


前回、『北斎「藍の傑作」に迫る』でご紹介した、浮世絵の美しい青を作り出す「プルシアンブルー」は西洋から輸入された化学的な合成顔料。18世紀初頭に発見されたこの絵具は、日本には延享4(1747)年に輸入されました。現在のベルリンで作られたことから、日本では「ベルリン藍」、省略されて「ベロ藍」と呼ばれるようになりました。

1704年、ベルリンの染料業者がいつものように赤色絵具を作ろうとしていた際、手元にアルカリがなかったので他の研究者のアルカリを借りたところ、偶然青色の沈殿物(プルシアンブルー)が生まれたそうです。

そう、実は、美しい青の表現を可能にした「ベロ藍」はたまたま発見された絵具だったのです。この青色絵具の誕生の原因が、借りたアルカリが動物の血液由来のものだったためと解明され、製法が確立すると「プルシアンブルー」は世界的に用いられるようになっていきました。




■「ベロ藍」ができるまで

今年の6月に「静岡科学館る・く・る」さんへ実演会でお邪魔した際に、「ベロ藍」を作るという実験を行ってくださいました。ベロ藍が合成される様子が大変興味深かったので、その様子をお伝えいたします!

淡い緑色の硫酸第一鉄(左)と、赤色のヘキサシアノ鉄(Ⅲ)酸カリウム(右)を、水によく溶かした溶液がこちら。
この二つを混ぜ合わせると …

黄色と赤褐色だった二つの液体が混ざり合った途端、不思議なことに青色の沈殿ができました!
混ぜ合わせた液体とはまったく違う色の液体ができた瞬間はとても驚きました。発見した染料職人もきっとこんな気持ちだったのでしょう。


出来上がった混合液をビーカーに出してみると、沈殿していた青色の絵具は少しドロッとしていました。

紙に着色してみると、見事な藍色が現れました。多くの浮世絵を鮮やかに彩ったベロ藍は、このように作られていたんですね!


■「ベロ藍」が彩る浮世絵

こちらは爽やかな青色が目に涼しい、葛飾北斎 冨嶽三十六景の一図「武州玉川」。

葛飾北斎 富嶽三十六景 武州玉川

葛飾北斎「武州玉川


葛飾北斎 富嶽三十六景 武州玉川

広がりを感じさせる吹き下げぼかしの美しい空も、

その冷たさが伝わってくるような澄んだ水の色も、

葛飾北斎 富嶽三十六景 武州玉川

偶然に発見された青色絵具「ベロ藍」から生み出されたことを考えると、さらに魅力的に見えてきますね。

「広重と北斎“藍色対決”! 藍色遣いで魅せる夏の浮世絵」はこちら >>

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