若草の緑も鮮やかな季節になってまいりましたね。春も深まり、様々な草花が可憐な花を咲かせています。行楽日和のお天気が続きますが、今年は外出や遠出もままならない情勢です。今回は、ご自宅での心和むひと時をお手伝いする、北斎が描いた花鳥画をご紹介いたします。
心を癒す北斎の花鳥画は、ご自身でお楽しみいただくのはもちろん、来月の母の日のプレゼントにも最適です。 また、こういった時期ですので、残念ながらゴールデンウィークの帰省を見送られた方もいらっしゃるでしょう。遠くにお住まいのご家族やご友人など、今、会えない大切な方に贈っていただくのにもおすすめです。 |
葛飾北斎が描いた花鳥画の傑作シリーズ
世界的知名度を誇る「神奈川沖浪裏」をはじめとした「冨嶽三十六景」シリーズを代表に、主に風景画で知られる北斎ですが、花鳥画においても数々の優れた作品を描いています。中でも大判の画面を横長に使った全10図からなるこの花鳥画集は、傑作揃いのシリーズです。
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あやめにきりぎりす |
百合 |
牡丹に蝶 |
桔梗に蜻蛉 |
菊に虻 |
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朝顔に雨蛙 |
桧扇 |
紫陽花に燕 |
芙蓉に雀 |
罌粟 |
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この花鳥画シリーズで北斎は、鋭い観察眼と優れた表現の技を自在に用いています。
例えば、シリーズ中の「菊に虻」では、ボリュームのある花びらの一枚一枚や、特徴のある葉の形だけでなく、風に翻った葉の裏表までを繊細な細い線で描き分けており、その造形の細かさと正確さには驚かされます。
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<細かく正確な線で描きこまれた花> |
森羅万象あらゆるものの真を描き出そうとした北斎の心意気が伺えるこのシリーズは、実際の花を眺めているのと同じように心穏やかなひと時を作り出します。 |
一瞬の美を描く「静」と「動」の表現
本シリーズで最も特徴的な点は、作品によって「静」と「動」という要素を効果的に用い、自然の中での風・空気・時間までを表現しようと試みているというところです。
北斎の二大代表作「凱風快晴」と「神奈川沖浪裏」は、前者が「静」後者が「動」を感じさせる作品として良く比較されますが、本シリーズも風が止み静止した瞬間の静かな美しさを描いた「静」の作品と、逆に風に吹かれ動いた一瞬を捉えた「動」の作品の二つに分けてみることが出来ます。
今の季節にぴったりの2作品を例に見てみましょう。
静かにたたずむ 繊細なあやめの花 「あやめにきりぎりす」
春の終わりごろから咲き始めるあやめの花と、その葉の間に隠れたきりぎりすが描かれています。こちらは「静」に分類される一図。

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花びらの微妙な色の変化までが描かれたあやめの花。ぴんとまっすぐに伸びた葉や花の茎が、風のとまった一瞬の静寂を感じさせ、凛とした空気を生み出しています。 |

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葉の陰でじっと身をひそめるきりぎりすも、少しの風が吹けば今にも飛び出してきそうな印象を与えます。 |
色鮮やかな藍のぼかしが美しく、心癒されるこの一枚。あやめの花言葉は「よき便り・愛」で、大切な方への想いを伝えるのにもぴったりの作品です。
風に吹かれて揺れる 華やかな牡丹の花 「牡丹に蝶」
蝶が風に吹かれて揺れる牡丹に留まろうとした瞬間を的確に捕らえた一図です。風や蝶の表現からもわかるように、こちらは「動」に分類される一枚ですね。

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花びらの細かな線までもが繊細に描かれ、風に吹かれ柔らかな花びらがたわむさまが見事に表現されています。 |

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風で翻った葉の裏表も正確に描き分けられています。 |
春の空気の中、牡丹の花の香に誘われやってきた蝶がひらひらと可憐に飛ぶ様には、心が和みます。 柔らかな色合いで表現された華やかな一図で、女性の方に大変人気の作品です。
花を贈るように、花の浮世絵を贈る
絵画のお花なら、切り花のように枯れることもなく、鉢植えよりも気軽に、一年中好きなときに飾って楽しめます。 また、北斎の描いた花鳥画は、大変モダンな線と配色で作られており、現代の洋間のお部屋にもぴったりの作品です。
アダチの復刻版浮世絵版画は、職人の手仕事ならではの温かみのある作品です。機械印刷では出せない鮮やかで深い発色や、手漉きの和紙の風合いをお楽しみいただけます。
今年は離れて過ごさなければならない分、ご家族への日ごろの感謝を込めた贈り物に、記念に残る浮世絵のお花はいかがでしょうか。 |

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