kobe01.JPG明日26日から神戸市立博物館で「ボストン美術館浮世絵名品展 北斎」展が始まります!昨日は設営のために会場へ行ってきました。

90歳で没するまでの70年間、風景画をはじめとして優れた作品を幅広く描き続けた北斎。今日では日本が世界に誇る浮世絵師ですが、実は世界で初めて本格的な北斎展を開催したのはアメリカのボストン美術館だったそうです。そんな北斎とゆかりの深い美術館の名品展をご紹介します!

kobe02.JPG
今回の特別展では世界中でボストン美術館のみに所蔵が知られる団扇絵「菖蒲に鯉」などが出品。他にも珍しい作品が多く出品されているだけでなく、ボストン美術館所蔵の浮世絵は非常に保存状態の良いことで有名で、摺られた当時の様子を感じられる色鮮やかな浮世絵を楽しめるのもポイントです。
<入り口にはオシャレにデザインされた赤富士!>

また、校合摺(きょうごうずり)もおすすめの見どころ。
「校合摺(きょうごうずり)」とは、絵師の描いた線を彫りおこした版木を使って一番最初に10枚程度摺られたものを言います。絵師が色の部分指定をするために使ったもので、その後色板の制作のために板に貼って彫ってしまうため、校合摺を見ることができるのはとっても貴重なことです。
そして、なんといっても彫りたての板を摺った最初の数枚なので、シャープな線を見ることができます。今回は仕上がったものと校合摺りが並べて展示してある作品もあり、見比べるとその線の細かさの違いに驚き、浮世絵の面白さを改めて感じました。ぜひ、彫りの繊細さに注目してみてはいかがでしょうか。

そして、展覧会場の最後で紹介されている「凱風快晴」の制作工程の展示にもご協力しております。是非、北斎の素晴らしい作品と併せてこちらもお楽しみください。

kobe04.jpg

そして展覧会の出口付近、会期中アダチ版画研究所がお店を出店しています!
北斎の作品を中心に、職人の手による鮮やかな浮世絵作品を多くご紹介しております。
先ほどお話した団扇絵「菖蒲に鯉」の復刻もございますので、ぜひこの機会に実際に手に取って、木版の魅力をお楽しみください。


hokusai.jpg


ボストン美術館浮世絵名品展 北斎
場所:神戸市立博物館 
会期:4月26日~6月22日(月曜日休館)
※4/28、5/5は開館
時間:9:30-17:30
※土曜日は19時まで開館

詳細は展覧会サイトにてご確認ください
http://ukiyoe.exhn.jp/

アダチセレクト「話題の一枚。」

前回は、喜多川歌麿という絵師の人物像に触れつつ「ビードロを吹く娘」に施された雲母引き(きらびき)の技法をご紹介しました。

江戸の人の心を掴んだ大首絵と雲母引き。では、このふたつのアイディアをプロデュースしたと言われる名版元、蔦屋重三郎は一体どのような人物だったのでしょうか。彼がこの作品をつくった背景とは?


ビードロ生みの親 蔦屋重三郎

蔦屋重三郎は寛延三年(1750)、吉原に生まれたとされています。
江戸の中でも特に華やかな世界で育った重三郎は、吉原を訪れる人のために出版されたガイドブック「吉原細見」の販売をきっかけに出版業にも手を伸ばしていったようです。

多くの文化人が出入りする吉原という場所ではたくさんの出会いがあったのでしょう。重三郎はその環境と商才を生かして一代で「蔦屋」の店を、江戸を代表する名版元のうちのひとつに成長させたばかりでなく、現代まで残る優れた作品を多く出版しました。

蔦屋の版元印は富士山形に蔦の葉一枚。写楽や歌麿の名前の脇に見ることができます。

蔦屋の版元印
<蔦屋の版元印>

また若い才能を見出すことにも長けていて、特に歌麿のことは自宅に居候させて面倒を見ていた時期もあるそうです。重三郎のそうした面倒見の良さも、歌麿から良作を引き出す要因のひとつだったのかもしれません。

そして彼の「文化を育てる」という精神は、みなさんよくご存じのレンタルビデオショップが蔦屋重三郎にあやかって社名を付けたという話からもわかるように、現代においても評価されています。


厳しい改革のなかで

作品が誕生した時代は、幕藩体制の安定化を目指した幕府が市民の贅沢を禁止しようと、寛政の改革によって様々な規制をかけていた時期で、それは出版業界も例外ではありませんでした。華美な錦絵、モデルの実名が入った美人画など、浮世絵にはあらゆる禁令がかけられていったようです。特に人気版元であった蔦屋は、取り締まりの中で財産の半分を没収されるという厳しい処罰も受けたほどでした。

では、蔦屋はなぜこの厳しい状況下で歌麿や写楽などのヒット作をプロデュースし続けたのでしょうか。

版木


そこには蔦屋重三郎の、常に人を喜ばせるものを作ろうという版元としての情熱が感じられます。

たとえば写楽の大首絵を見てみると、使われている色の数は決して多くないことがわかります。

制作コストはかけないながらも「雲母引き(きらびき)」という新しい技術を使うことで、面白いものを作ろうという重三郎の気概が伝わってくるようです。

<左:豊国「大星由良之助」の版木は6枚、右: 写楽「江戸兵衛」の版木は4枚。版木の少なさは一目瞭然>


改革によって楽しみが奪われていく中で出版された、歌麿の大首絵の斬新な構図や手に取った時のずっしりとした雲母(きら)の感触に、重三郎の狙い通り江戸の人々は驚きと喜びを感じたことでしょう。

手に取ることで感じられる
<手に取ることで感じられる"雲母(きら)"の輝き>


「ビードロを吹く娘」からみえるもの

喜多川歌麿「ビードロを吹く娘」

「アダチセレクト 話題の一枚。」第二回は喜多川歌麿「ビードロを吹く娘」をご紹介してまいりましたが、いかがでしたか?
当時の最先端の流行が画期的な技術でもって描かれた本作からは、その背景にある版元の情熱や息遣いを感じていただけたのではないでしょうか。

ぜひ、当時の人々が浮世絵に注いだ情熱を感じながら作品をお楽しみください。


喜多川歌麿 「ビードロを吹く娘」 商品詳細はこちら >>

fb_140414.jpg

春の暖かい陽気に包まれた本日、「百花繚乱 花の浮世絵」をテーマに目白ショールームの展示替えを行いました。新緑の季節には、さまざまな色鮮やかな花々が咲き乱れ、華やかな気持ちになります。

広重が描く愛らしい薔薇や、清長が描く藤のたおやかな風情、北斎が描く菖蒲の凛とした佇まいなど、それぞれの花の魅力が詰まった浮世絵を展示。

季節の花々が咲き誇る目白ショールームに、ぜひお越しください。
https://www.adachi-hanga.com/ukiyo-e/showroom/

ご自宅に絵を飾って楽しんでいらっしゃる方も多いかと思います。浮世絵だけに限らず、お気に入りのポスターや絵画・写真などを飾るだけで、お部屋の印象が変わり、気分も華やかになる感じがします。
いつも同じ絵を飾っているよりも掛け替えることで、より生活に彩りが増えるのではないでしょうか。

今回は、アダチ版画から徒歩数分ほどの場所にお住まいで、いつも実演会にもご参加いただき、普段からお部屋でも浮世絵をお楽しみいただいている森様ご夫妻のお宅にご訪問させていただきました。

数年前にもお宅訪問インタビューでご登場いただきましたが、このたび一軒家を新築されたとのことでお二人の新しい こだわりの空間にお邪魔し、改めてインタビューさせていただきました。

まず目に飛び込んできたのが、玄関ホールに飾られた葛飾北斎の「踊行列図」。絵の下には重厚感のある箪笥を配し、季節を感じる小物などのインテリアにもこだわり、生活の一場面として浮世絵を楽しんでいらっしゃるようです。

<玄関ホールに飾られた北斎「踊行列図」>

Q.浮世絵を飾ることの楽しさや魅力は、どんなところにありますか?

A.浮世絵に囲まれて生活していると、とても心が和む気がします。飾る絵によって部屋の雰囲気が影響するように感じますね。水墨画などの白黒の絵に比べ、色鮮やかな浮世絵を飾ると気分が華やぎます。


◆ 掛け替えて楽しむ浮世絵

いつもアダチ版画をご利用していただき、数多くのアダチ版浮世絵版画をお持ちいただいている森様ご夫妻に「浮世絵を掛け替えて楽しむポイント」についてお聞きしました。

Q.掛け替えるペースはどのくらいですか?

A.普段、玄関やリビング、書斎などに5点ほど飾っています。飾る場所やその時の気分、季節によって掛け替えを定期的にしています。ほぼ毎月掛け替えています。

Q.飾る絵を選ぶときに、お二人の中で何か決まり事はありますか?

A.飾る作品によって生活する私たちの気分も変わるので、どの場所にどの絵を飾るか、二人で選びながら掛け替えを楽しんでいます。

<いつも仲の良い森様ご夫妻>


お気に入りの一枚に掛け替える

実際に普段、浮世絵を掛け替える様子を見せていただきました。
以前、セットでご購入いただいた歌川広重の「冨士三十六景」の中から、今回は桜の季節に合わて「武蔵小金井」に掛け替えていただきました。

<数ある中からお気に入りの一枚を厳選>


絵の入れ替え作業はご主人様のご担当とのこと。
ほぼ毎月掛け替えされているので、入れ替え作業もスムーズ。慣れた手つきで額を取り扱っていらっしゃいました。

<手慣れた様子で絵を入れ替えるご主人様>

窓際の明るい壁に額を飾られるご主人様。ワイヤーフックの長さを調節し額の左右の高さを合わせます。 玄関ホールと同様に、絵の下には季節を感じる小物などのインテリアを配置。こちらお奥様のご担当とのことで、とても素敵な雰囲気になりました。

<額の左右の高さを調節します> <インテリアにもこだわって浮世絵を楽しむ>

今回ご紹介した森様ご夫妻のように、絵を掛け替えて楽しんでいらっしゃる方も多いかと思います。飾る季節やお部屋の雰囲気に合わせ、絵を入れ替えて浮世絵をお楽しみください。

今後も随時、浮世絵を楽しんでいただいているお客様のご様子をご紹介していきます。

アダチセレクト「話題の一枚。」

前回の「話題の一枚。」では、数ある美人画の中で最も高い知名度と人気を誇る、喜多川歌麿の傑作「ビードロを吹く娘」の魅力とその人気の秘密についてご紹介しました。

今回は、より本作を深く楽しんでいただくため、美人画の第一人者となった喜多川歌麿という人物像を探りつつ、それまでの浮世絵にはなかった新しい表現方法で描かれた「ビードロを吹く娘」に凝らされた技と工夫について迫ります。

喜多川歌麿とは

北斎、広重、写楽と並び、世界的にもよく知られている浮世絵師の歌麿は、浮世絵の黄金期において美人画絵師として活躍しました。しかし、その生涯について実はよくわかっていないようです。

吉原遊郭に住みつき多くの遊女を描き続けたことから、「青楼(せいろう)の画家」と呼ばれる歌麿。寛政2~3年(1790~91年)頃に発表された「婦女人相十品(ふじょにんそうじっぴん)」というシリーズの一枚である本作のように、それまでの春信や清長が描いた全身の美人画とは異なり、女性の体をクローズアップし、顔を大きく取り上げて描いた「大首絵(おおくびえ)」というジャンルを確立し、一世を風靡したとされています。

目鼻や口などの細かな視線や表情、手や指のしなやかな仕草などを一人一人描きわけることで、女性たちの内面性までをも表現した歌麿は、「美人画を描かせたら歌麿が一番」と言われるほど、「美人画=歌麿」と誰もが認める絵師となったのです。

喜多川歌麿「ビードロを吹く娘」
<喜多川歌麿「ビードロを吹く娘」>


きらきら輝く背景の秘密!

江戸時代の人々が浮世絵を間近で楽しんだように、本作を手に取りその表面をじっくりと見てみると、人物の背景がきらきらと輝いているのがわかるかと思います。
浮世絵版画は通常、版木の上に水性の絵具を置き、和紙の裏からばれんで絵具を摺り込んでいくことで、表面はすっきりとした印象を感じさせます。

きらきらと輝く華やかな背景

一方、本作の白い背景の部分には、鉱物の一つである雲母(うんも)の粉末と、接着剤の役割をする膠(にかわ)を混ぜた「雲母(きら)」といわれるものを刷毛で和紙の上にのせています。

和紙の上にもったりとのった雲母(きら)が、作品に重厚感と華やかさを感じさせます。

<きらきらと輝く華やかな背景>

背景以外の人物の部分が隠れるように渋皮の型紙をあて、雲母(きら)を刷毛で引いてくこの技法は、「雲母引き(きらびき)」と呼ばれています。

アダチ版画では、当時の浮世絵と同じ質感を忠実に再現すべく、このような技法をとっております。

当時の浮世絵と同じ質感を再現する
<当時の浮世絵と同じ質感を再現する"雲母引き">


「大首絵」を得意とした二人の巨匠

東洲斎写楽「三世大谷鬼次 江戸兵衛」

ブロマイドのように背景をなくし、人物の顔を大きく取り上げた「大首絵」。
歌麿のほかに大首絵を得意とした絵師には、みなさんもよくご存知の「三世大谷鬼次 江戸兵衛」を描いた東洲斎写楽がいます。

実はこの作品も「ビードロを吹く娘」と同様、背景には雲母引きが施されています。

<黒雲母の背景が特徴的な「三世大谷鬼次 江戸兵衛」>

 

きらきらと輝く背景で華やかさを演出した「ビードロを吹く娘」。それまでになかった表現方法で制作されたことが、「新しもの好き」といわれた江戸の人々に好まれた一つの理由だったのかもしれません。
時代を先取りし、江戸の人々の心をとらえた二人の絵師を生み出したのが、版元の蔦屋重三郎といわれています。

次回は、「ビードロを吹く娘」が生まれた時代背景とともに、版元としてプロデュースした蔦屋重三郎について迫ります。

喜多川歌麿 「ビードロを吹く娘」 商品詳細はこちら >>

品質へのこだわり

品質へのこだわり

アダチの浮世絵は、手にして初めて分かる、熟練の技術と日本の伝統が詰まっています。

製作工程

制作工程

一切機械を使うことなく一枚一枚職人の手仕事により丁寧に作られている木版画です。

厳選素材・道具

厳選素材・道具

江戸当時の風情を感じられる当時の浮世絵の再現にこだわり、厳選した素材と道具を使用。

職人紹介

職人紹介

最高の作品を創り出すために、日々技術の研鑽を積む熟練の職人たち。

浮世絵の基礎知識

浮世絵の基礎知識

意外と知らない?浮世絵の世界。浮世絵の基礎知識をご紹介。