◆ 企画展-Part3- 「ブラジルアーティスト×アダチ版画」開催日程決定!

ブラジル日本移民100周年(2008)にあわせ、ブラジルを代表するアーティスト10名が日本の伝統木版技術で現代の浮世絵制作に挑戦するという両国の文化交流事業として始まったプロジェクト。

このたび、財団設立20周年及び日伯外交関係樹立120周年を記念して完成作品10図を中心に制作工程などを初披露する企画展を目白ショールームにて開催することとなりました。

生命力溢れるブラジルアーティストと世界に誇れる日本の高度な伝統木版技術、日本とブラジルの文化交流により生まれた鮮やかな美の世界をご堪能ください。


【出品作家】  豊田 豊  Antonio Dias  Flavio Shiro Tanaka  
 若林 和男  Antonio Henrique Amaral  Gilberto Salvador  
 金子 謙一  Claudio Tozzi  Sergio Lucena  
   Fang  

 

【開催概要】
企画展-Part3- 「ブラジルアーティスト×アダチ版画」
会 期  2015年4月21日(火)~5月10日(日) 【 休業日:4/27,29,5/3-6 】
時 間  火~金 10:00-18:00/土・日 10:00-17:00
場 所  目白ショールーム 詳細はこちら >>
入場料  無料
アダチ版 浮世絵こぼれ話

 

このところ続く春の陽気に誘われて、桜の開花ももう間もなくといったところ。 日本の春を象徴する花として、桜は現代の私たちと同様に江戸時代の人々にも愛されてきました。

今回ご紹介するのはそんな桜を題材にしたこの季節にぴったりの傑作。

重なり合う満開の桜と辺りに漂う春霞、その向こうに富士山を望む美しい春の情景を描いた、葛飾北斎「桜花に冨士図」の魅力に迫りたいと思います。

桜花に富士図

桜と富士――日本を象徴する二大モチーフ

本図の主題として描かれ、題名にもなっている「桜」と「富士山」。
日本の象徴ともいえるこの二大モチーフを北斎はどのように描いたのでしょうか。

■北斎の「桜」
自ら画狂人を名乗り、世の中のあらゆるものを描こうと挑んだ北斎は、花鳥画にも優れた才能を発揮しました。

北斎は本図の中で、桜の花の一輪一輪までも輪郭を描きわけ、何色も色合いを変えて画面に散りばめることで花の重なり合う立体感を作り出しました。そこに更にぼかしや空摺を加え、満開の桜の華やかさを巧みに表現しています。

桜花に富士図
<よく見ると花びら一枚一枚まで、全て輪郭線が描かれています>

 

彫師・新實

彫師の一言
「この図は桜の花びらの一枚一枚まで細かく描いてあって、しかも線の色だけでも一色じゃなく幾つにも分かれている。それを板を分けながら、全て彫り分けているんだ。摺物だけあって手が掛かっているよ部彫りあげるのは時間が掛かったよ」

(彫師・新實)

【鑑賞豆知識】桜
江戸時代に一般的だった桜は、ソメイヨシノではなく山桜でした。色は白から薄紅まで様々で、花と葉が同時に出るのが特徴です。本図で描かれているように、濃さの異なる花が一面に広がる様はさぞ見応えのある眺めだったことでしょう。

 

■北斎の「富士」
北斎にとって富士山は生涯のテーマの一つでした。代表作「凱風快晴」を始めとするシリーズ「冨嶽三十六景」では、季節や場所によって様々な富士山の表情を描き分けています。

本図では、「凱風快晴」の力強く堂々たる姿とは対照的に、満開の桜越しに白く雪を被った優美な姿をすっきりとした筆遣いで描いています。

  凱風快晴   桜花に富士図  
  堂々と力強く描かれた
「凱風快晴」の富士山
  白く雪を被った姿が優美な富士
稜線もすっきりと描かれています
 

 

技を凝らした特注の逸品!――葛飾北斎の「摺物」

先ほどの彫師・新實親方の言葉に出てきた「摺物」とは、江戸時代当時、特注品として作られた作品です。
一般に広く販売された一枚絵とは異なり、主に配り物として特別注文で制作されたもので、色遣いや技法に工夫を凝らした豪華な作品も多く、売り物の浮世絵とは異なる趣があります。

注文主の多くは裕福な商人や教養のある趣味人で、絵暦や俳諧・狂歌を添え仲間内で配られた趣味のものや正月・祝い事の配り物などに用いられました。

■特徴 その1――紙
特注品である「摺物」には、紙も質の良いものが使われていました。厚手でしっかりした上質な紙は発色が良く、紙に凹凸をつける空摺の技法も映えるものでした。

また、サイズも特注品であるため様々でした。版元から出版される通常の浮世絵の場合、最もポピュラーなサイズは大判と呼ばれるものでしたが、本図は長判と呼ばれる横長のサイズです。

紙のサイズ
<最もポピュラーなサイズの「大判」と、本図のサイズ「長判」>

 

■特徴 その2――色遣い
色遣いの違いも「摺物」の大きな特徴のひとつです。限りなく色を少なくし省略の中で表現する通常の浮世絵とは異なり、手間を惜しまず贅を凝らして作られた「摺物」は、淡い色合いを何度も摺り重ねることで木版でありながら肉筆画を思わせるような上品で繊細な色合いを表現しています。

本図も淡い色を重ねることで、春らしい穏やかな空気感や咲き乱れる花の量感が見事に表現されています。

桜花に富士図
<淡い色を何度も重ねることで、春の穏やかな陽気や桜の量感まで繊細に表現しています>

 

■特徴 その3――技法
「摺物」の多くは好事家の仲間内で配られたため、より質の高い美しい作品が競うように求められ、ぼかしを随所に入れたり「空摺」を入れるなど、手の込んだ技法がふんだんに用いられました。

【鑑賞豆知識】空摺
版木に絵の具をつけずに摺ることで、和紙の持つ風合いを活かしたまま立体的な凹凸を付ける技法を「空摺(からずり)」と呼びます。 主に、雪・花びら・鳥や昆虫の羽・着物の模様などを表現する際によく使われる技法です。

  凱風快晴   桜花に富士図  
  <版木に絵の具をつけずに摺り、立体的な凹凸を付ける「空摺」>  

摺師の一言
「空摺は力を入れすぎると板も紙も傷んでしまうし、力が足りないと綺麗な線が出ない。紙を傷めないようにしっかり跡をつける、力の加減がポイントかな」

摺師・京増
(摺師・京増)

【ココが見所!】
北斎は富士と桜という二つの象徴的なモチーフを取り入れ、本図に人々が普遍的なイメージとして持つ日本の春の情景を描き出しました。また、それらを存分に表現する空摺やぼかしといった高度で手の掛かる制作工程は、コストや売れ行きといった販売の制約にとらわれない摺物だからこそ実現できたものでした。 北斎が筆を尽くして描き、職人たちが技を尽くして表現することで完成したこの春の傑作は、日本人の心象風景そのものとしてこの先も時代を超えて人々を魅了することでしょう。

葛飾北斎「桜花に富士図」 商品詳細はこちら >>

 

先月18~23日にかけて、東ヨーロッパにあるスロベニア共和国へ出張実演に行ってまいりました。
今回は国際交流基金さんからのご要請で、スロベニア第三の都市ツェリエにて開催中の「写楽再見」という展覧会にあわせ、若手摺師・山本による伝統木版画の摺り実演をご披露させていただきました。

写楽の作品とグラフィックデザイナーや現代美術作家が写楽をそれぞれ再解釈し表現した作品を紹介する「写楽再見」では、私どもアダチ版の大首絵28点を展示していただいています。展覧会は今月22日まで開催中です。

ツェリエ現代芸術ギャラリー
<海外巡回展「写楽再見」開催中のスロベニア・ツェリエ現代芸術ギャラリー>

 

スロベニアでも大人気!伝統木版画の技に拍手喝采

今回の実演は、展覧会開催中のツェリエ現代芸術ギャラリーと2010年に東欧4ヵ国の海外出張実演で訪れた、首都にあるリュブリャナ民俗学博物館の2会場で行いました。

リュブリャナ民俗学博物館

スロベニアの方々は浮世絵への関心が非常に高く、リュブリャナでの実演では用意していた60席があっという間に埋まり、立ち見のお客様も出るほどの大盛況!100名を超す方々にお集まりいただきました。

<満員御礼!リュブリャナ民族学博物館での実演>

 

実演が始まると、摺師・山本の一挙手一投足をつぶさにご覧になっていました。
また摺り進めていくと同時に、和紙や版木・絵の具などの素材、ばれんや刷毛などの道具についてご説明しました。

「たくさん色を使っているのに、どうして色が混ざらないのか?」「木の素材は?ばれんは何で出来ているのか?」「絵の具は江戸時代と同じものなのか?」など、皆さん初めて見る素材や道具に興味津々のご様子。
楮(こうぞ)100%で作られた和紙の長くて丈夫な繊維の中に、ばれんを使って顔料を摺り込むことによって、木版独特の鮮やかな発色や柔らかな温かみのある風合いを作り出している旨を説明すると、ご理解いただけたようでした。

雲母引き 雲母引き 雲母引き

実演終了後には、摺りあがった作品を実際に手にとってご覧いただきました。凸凹になった和紙の表面を触ったり、顔を近づけて細部をじっくり見たりと、江戸時代の人々と同様に浮世絵を間近で楽しんでいただけたようです。版木や道具もじっくりご覧いただきました。

伝統木版画の技術を披露するだけでなく、次世代を担う後継者となる若い職人の成長も知っていただけた良い機会になったように思います。

ツェリエ現代芸術ギャラリー
<リュブリャナ民俗学博物館の館長ボヤナさんと共に>

 

日本から遠く離れたスロベニアの皆さんに木版技術へ深い関心を持っていただき、我々もたいへん嬉しく、とても良い文化交流となりました。ご参加いただいた皆さん、そして主催者の方々に感謝いたします!ありがとうございました。

現在開催中、および今月開催のオススメ展覧会をご紹介します!
各地で魅力的な展覧会が目白押しです。
春の訪れとともに、美術館・博物館へお出かけしてみてはいかがでしょうか。

 

◆ 今月のPick up!オススメ展覧会

 

アダチ版画とのコラボレーションでもおなじみ、今人気実力ともにNo.1のアーティスト山口晃氏の展覧会が、水戸芸術館現代美術ギャラリーにて開催中です。

 

人物や建物などを緻密なタッチで描き込まれた画風が、国内はもちろん海外でも高く評価を得ている山口晃氏。
現代と過去、現実と非現実が混然となる山口ワールドに浸れる展覧会へぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

また、アダチ版画のショールームでも企画展「山口晃氏が描く!選ぶ!語る!」を開催中(~3/15まで)です。人気シリーズ「新東都名所」の制作工程の全てを余すことなくご紹介しています。ぜひお越しください。
詳細はこちら >>



 
水戸芸術館 現代美術ギャラリー (茨城 水戸)
山口晃展 前に下がる 下を仰ぐ
2月21日(土)~5月17日(日)


◆ アダチ版復刻浮世絵の取り扱いがある美術館・博物館

下記でご紹介する美術館・博物館では、常時アダチ版復刻浮世絵をお求めいただけます。(お求めいただけない商品もございますので、ご了承ください。)


太田記念美術館 (東京 原宿)
江戸ッ娘-Kawaiiの系譜
3月1日(日)~3月26日(木)

静岡県東海道広重美術館 (静岡 由比)
大御所さまの東海道-五十三次旅景色-
2月3日(火)~3月29日(日)

中山道広重美術館 (岐阜 恵那)
企画展「不二三十六景」
2月26日(木)~3月29日(日)
 
MOA美術館 (静岡 熱海)
コレクションにみる桜の美術
3月6日(金)~4月15日(水)
広重美術館 (山形 天童)
江戸のおしゃれ~いろ・もよう~
2月27日(金)~ 3月30日(月)
東京国立博物館 (東京 上野)
浮世絵と衣装-江戸(浮世絵)
2月17日(火)~ 3月15日(日)

◆ その他、オススメの浮世絵展覧会


会場にてアダチ版浮世絵販売あり!


東京富士美術館 (東京 八王子)
とことんみせます!富士美の浮世絵
2014年12月6日(土)~3月29日(日)



静岡市美術館 (静岡 葵区)
没後100年 小林清親展
2月7日(土)~3月22日(日)



和泉市久保惣記念美術館 (大阪 和泉)
物語の情景-源氏・伊勢・和泉式部-
2月7日(土)~3月29日(日)
 
石神井公園ふるさと文化館 (東京 練馬)
【特別展】富士山
-江戸・東京と練馬の富士-
1月24日(土)~3月15日(日)
ホノルル美術館 (ハワイ ホノルル)
Modern Love
20th-Century Japanese Erotic Art
2014年11月20日(木)~3月15日(日)
 
品質へのこだわり

品質へのこだわり

アダチの浮世絵は、手にして初めて分かる、熟練の技術と日本の伝統が詰まっています。

製作工程

制作工程

一切機械を使うことなく一枚一枚職人の手仕事により丁寧に作られている木版画です。

厳選素材・道具

厳選素材・道具

江戸当時の風情を感じられる当時の浮世絵の再現にこだわり、厳選した素材と道具を使用。

職人紹介

職人紹介

最高の作品を創り出すために、日々技術の研鑽を積む熟練の職人たち。

浮世絵の基礎知識

浮世絵の基礎知識

意外と知らない?浮世絵の世界。浮世絵の基礎知識をご紹介。