あっという間に小正月も過ぎてしまいましたが今年のお正月は、皆さんはどうお過ごしになられましたか?各地で開催されていた展覧会に足を運ばれた方も多くいらしたのではないでしょうか?
中でも1月9日から始まった千葉市美術館の「初期浮世絵」展は、大変評判が良く、特に浮世絵好きの方々の間ではイチオシの展覧会となっているようです。
そこで、アダチ版画では展覧会に合わせ、これまで復刻した初期浮世絵の中から傑作をご紹介する事にいたしました!
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初期浮世絵って何?
今回タイトルにもある「初期浮世絵」とは、どんな浮世絵をさすかご存知ですか? 文字通り、最初の頃の浮世絵という意味ですが、それは、北斎や広重の作品のような多色摺りの浮世絵、つまり「錦絵」より前に作られた浮世絵の総称として使われています。つまり、多色摺が可能になる以前ですから、墨一色の墨摺絵やそれに彩色したもの、そして2~3色のみ簡単に版で色を加えた浮世絵などです。
ここに、代表的な作品をご紹介しましょう。
初期浮世絵の変遷 江戸庶民の色への憧れ
墨摺絵
江戸に幕府が移り、そこに生活する人々の暮らしも落ち着いたころでしょう。浮世絵の祖として有名な菱川師宣は、「見返り美人」など肉筆の名品に加え、墨一色の版画(墨摺絵)を残しています。
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17世紀後期、墨一色の絵本から始まり、さらに挿絵から一枚の絵として独立した浮世絵が出版されるようになったようです。
江戸の人に重要な娯楽であった吉原や歌舞伎に関係したもの、そして春画やあぶな絵も描いています。 |
菱川師宣 「秋野嬉戯」 |
彩色した浮世絵 |
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テレビや新聞・雑誌なども白黒からカラーへと変化していったように、いつの時代もより色鮮やかなものに人々は憧れを持つようです。
浮世絵の世界も同じく、墨一色だった浮世絵では飽き足らず、次第に買った人が自分で彩色したり、彩色した浮世絵が売り出されるようになります。使う色によって丹絵・紅絵・漆絵など様々なタイプの彩色浮世絵が出てきます。 |
左/ 初代鳥居清倍 「春愛でる美人」
右/ 石川豊信 「桜に短冊を結ぶ娘」 |
紅摺絵 |
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そして、浮世絵を楽しむ人が増えてくるとより多くの人に行き渡るよう大量生産の可能性を版元そして彫師・摺師たちが探ったのでしょう。
18世紀中頃に墨の線以外、赤や緑といった2色程度の色を版で入れることができるようになったようで、2~3色で構成される紅摺絵が出現しました。 |
石川豊信 「中村喜代三郎 文読美人」 |
ここまでが今回ご紹介する「初期浮世絵」になります。
そして更なる色と量産化を目指し生まれたのが皆さんおなじみ、フルカラーの浮世絵「錦絵」です!その誕生の秘密については昨年の「錦絵誕生250周年」のコラムをお読みください。
初期浮世絵の魅力 みどころ
菱川師宣が生まれる少し前、17世紀初めに現在の歌舞伎の原形が確立されたといわれています。 江戸の街の発展とともに歌舞伎が盛り上がり、人気役者のブロマイドとして出版されるようになった浮世絵が役者絵です。そして、初期浮世絵の題材に役者絵は多く描かれました。
今回は、歌舞伎界の中でも一番の人気者、市川団十郎を描いた初期浮世絵を2点ご紹介しましょう。
丹絵
初代鳥居清倍 「市川団十郎 竹抜き五郎」
漆絵
奥村政信 「二代目市川団十郎 助六」
初期浮世絵は、錦絵に比べると流通していた量も少なく、恐らくそのこともあってサイズも大きく迫力満点です。大きい分、絵師の筆づかいも大胆で、リズムを感じることのできる作品が多いのも特徴ではないでしょうか。今回のアダチ版画の初期浮世絵10撰をきっかけに、浮世絵創成期の作品の魅力を感じてみてください。
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