没後160年記念 広重 月の名作選

ようやく猛暑も落ち着き、すこし涼しくなってまいりましたね。秋も、すぐそこまでやってきている感じがいたします。浮世絵の世界で秋を楽しむというと、やはり叙情豊かな広重の月の名作が頭に浮かびます。浮世絵のアダチ版画では、9月6日に命日を迎え、今年が没後160年となる広重に注目して、秋にピッタリの「広重月の名作撰」を企画いたしました。本企画を通して広重の魅力に迫ってまいります!

安藤広重、歌川広重、どっち?

お客さまから、たまに受けるご質問で「広重って安藤じゃないの?歌川って書いてあるけど。」ということがあります。まずは、広重の名前の由来についてその出生から辿ってまいりましょう。

広重は、寛政9年(1797)江戸八代洲河岸の定火消同心・安藤源右衛門の子として生まれました。幼少より絵を好み、15歳のときに歌川豊広の門下となったそうです。

以前の教科書には、本名の「安藤広重」が用いられていましたが、最近は絵師として歌川派の広重ということを重視して「歌川広重」でほぼ統一されているようです。

安藤広重、歌川広重、どっち?

広重の風景画は、ここから始まった!「東都名所」

広重は、歌川豊広の門下で、はじめは、美人画や役者絵を描いていました。文政12年(1829)に師匠の豊広が亡くなった2年後、天保2年(1831)広重34歳の時、初の大判サイズの風景画シリーズ「東都名所」を手掛けました。当時広重が「一幽斎(いちゆうさい)」と号していたので「幽斎(ゆうさい)書き東都名所」ともいわれています。10枚揃いで、江戸及びその近郊の風景を描いたシリーズです。残っているオリジナルの数や摺られた具合からみてもかなりの量が摺られたことが想像でき、その人気がうかがえます。

広重の風景画は、ここから始まった!「東都名所」
<東都名所全10図>

俯瞰でとらえた風景に大きな前景を配する大胆な構図と色数を限り独特な配色でつくられたことから、庶民には、とても新鮮で人気も高かったようです。当時流行のプルシアンブルーを空や海に多用するとともに、帯状の紅色の雲がどの図にも配され、本シリーズを象徴する色づかいが見どころでもあります。穏やかで温かみある風景画は、庶民に好感を持って迎えられ、「東海道五十三次」の大作が生まれる下地となったといえるでしょう。
「両国之宵月」でその魅力に触れてみましょう!

近景に大きく両国橋の橋桁をとらえた大胆な構図

近景に大きく両国橋の橋桁をとらえた大胆な構図

紅色の雲 本シリーズ全作品に見られる
紅色の雲
 
  鮮やかなプルシアンブルー
  北斎なども使った流行色。
鮮やかなプルシアンブルー

「東都名所」の中の傑作「高輪明月」

今回は、「東都名所」の中でも月を描いた傑作「高輪明月」をご紹介いたしましょう。

「東都名所」の中の傑作「高輪明月」 「東都名所」の中の傑作「高輪明月」
摺りの風景

日本橋を出発し、品川に近くなると江戸湾の眺望が開ける所が高輪です。江戸の街から海道に出る境に設けられた簡単な関所があり、幕府の禁止事項や罪人の罪状などを記した高札が立てられた場所でもあります。その様子が図の左下の石垣や中央下の高札に見えます。
海岸に沿って茶屋など店が建ち並び、東海道を旅する人や、それを見送る人々、行楽の人々など、人の往来が盛んで、大いに賑わった場所です。湾曲した海岸線、江戸を発ってはじめて広がる江戸湾の眺望を鳥瞰し、雁が群をなして下り、宵の満月が空に光るなど多くの情報を丹念に描写した情景は、広重らしい表現で、細部に配慮することで生まれる臨場感が魅力です。

<ミニ知識>
東都名所の版元 川口正蔵は、国芳の大作「宮本武蔵鯨退治」を後年になって出版しています。版元のプロデュース力にも注目ですね!

安藤広重、歌川広重、どっち?

没後160年記念 広重 月の名作撰

今回は、没後160年を迎える広重の風景画の絵師としての出発点となった「東都名所」に焦点をあてて月の名作をご紹介いたしました。この他にも素敵な月の作品をご紹介しております。是非合わせてお楽しみください。

「没後160年記念 広重 月の名作撰」はこちら >>

現在開催中、および8月開催のオススメ浮世絵展覧会をご紹介します!
各地で魅力的な浮世絵の展覧会が目白押しです。

 

◆ 8月のPick up!オススメ展覧会

 

今、話題のびじゅチューンが東博とコラボ!世界の名画を歌とアニメで紹介するNHKEテレの番組「びじゅチューン」。映像作家の井上涼さんがかなり不思議かつ独自の視点でストーリー化した映像作品は凄いインパクトがあります。

 

そのびじゅチューンと東博がコラボした体験型企画展が東京国立博物館の本館で開催されています。浮世絵からは、肉筆の見返美人、北斎の名作神奈川沖浪裏、そして広重の大はしあたけの夕立などが題材に。新しい視点で名画を楽しんでみてはいかがでしょう。

会場にはアダチ版画が制作協力した大はしあたけの夕立の摺順序も展示されてます。夏休みご家族で足を運んでみてはいかがでしょう。



 
東京国立博物館 (東京 上野)
トーハク×びじゅチューン!
なりきり日本美術館
7月24日(火)~9月9日(日)



◆ アダチ版復刻浮世絵の取り扱いがある美術館・博物館

下記でご紹介する美術館・博物館では、常時アダチ版復刻浮世絵をお求めいただけます。(お求めいただけない商品もございますので、ご了承ください。)

太田記念美術館 (東京 原宿)
落合芳幾
8月3日(金)~8月26日(日)
すみだ北斎美術館 (東京 両国)
ますむらひろしの北斎展
ATAGOAL × HOKUSAI
6月26日(火)~8月26日(日)
静岡市東海道広重美術館 (静岡 由比)
出張日本平動物園
うきよえどうぶつ館
6月5日(火)~8月12日(日)
 
広重美術館 (山形 天童)
浮世絵かるた
8月3日(金)~8月27日(月)
中山道広重美術館 (岐阜 恵那)
思い出の江戸っ子アルバム
7月20日(金)~8月26日(日)
信州小布施 北斎館 (長野 小布施)
面白すぎる!!
北斎漫画の世界
6月16日(土)~9月9日(日)
 

◆ その他、オススメの浮世絵展覧会

相国寺承天閣美術館 (京都 今出川)
サンタフェ リー・
ダークスコレクション
浮世絵最強列伝~
江戸の名品勢ぞろい~
7月3日(火)~9月30日(日)
福岡市博物館 (福岡 百道浜)
ボストン美術館浮世絵名品展
鈴木春信
7月7日(土)~8月26日(日)
細見美術館 (京都 岡崎)
江戸のなぞなぞ-判じ絵-
6月9日(土)~8月19日(日)
 
和泉市久保惣記念美術館 (大阪 和泉)
浮世絵の妖怪とモノノケ
8月11日(土・祝)~9月24日(月)
那珂川町馬頭広重美術館 (栃木 馬頭)
広重没後160年記念 大広重展
-肉筆浮世絵と錦絵の世界-
7月14日(土)~9月24日(月・振)
山種美術館(東京 恵比寿)
水を描く
-広重の雨、玉堂の清流、土牛のうずしお-
7月14日(土)~9月6日(木)
品質へのこだわり

品質へのこだわり

アダチの浮世絵は、手にして初めて分かる、熟練の技術と日本の伝統が詰まっています。

製作工程

制作工程

一切機械を使うことなく一枚一枚職人の手仕事により丁寧に作られている木版画です。

厳選素材・道具

厳選素材・道具

江戸当時の風情を感じられる当時の浮世絵の再現にこだわり、厳選した素材と道具を使用。

職人紹介

職人紹介

最高の作品を創り出すために、日々技術の研鑽を積む熟練の職人たち。

浮世絵の基礎知識

浮世絵の基礎知識

意外と知らない?浮世絵の世界。浮世絵の基礎知識をご紹介。