■計算しつくされたバランス 北斎「菊に虻」
代表作『冨嶽三十六景』と同時期に北斎が描いた花鳥画シリーズの一枚です。本作品では風に吹かれる菊と、その香りに誘われやってきた虻が描かれています。 |
4~5種類に描き分けられた菊のうち、一番大きな橙色の花に注目してみましょう。
画面の奥から吹く風にあおられ揺れる花びらや葉が、裏表まで丁寧に表現されているのが見て取れるでしょうか。
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全体に重厚感のある複雑な色彩が用いられていますが、菊が風にたなびくさまや画面左上に描かれた虻などの、計算しつくされた「抜け感」が画面に動きを与えています。
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■優れた色彩感覚がうかがえる 広重「菊に雉子」
毅然とした立ち姿の雉子に、立派な菊の花を添えた本図は、広重の持つ豊かな叙情性や構図の妙が巧みに活かされた大短冊の花鳥画です。 |
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雉子の羽には華やかな色合いが用いられていますが、繊細な線からはそのやわらかさまで感じられます。
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広重の描いた菊は、文様を思わせるような、まるくてかわいらしい形をしています。花のこちら側は明るく、奥に行くにつれて赤色が濃くなるようぼかしが入れられ、画面の奥行きが感じられます。
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やわらかな書体で書かれた「菊の香やふくめる露のちる度に」の句のとおり、秋の野山に香る、かぐわしい菊の花と鮮やかな菊によく映える立派な雉子を描いた作品です。
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■お互いに引き立て合う美人と菊 栄水「兵庫屋内月岡 菊持つ美人」
一楽亭栄水は鳥文斎栄之の門人で、大首絵を得意としました。上からつるした花桶に菊を生ける遊女は、歌麿の美人画に近い、生き生きとした魅力的な美人となっています。 |
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花器に生けられた満開の菊の花。美人の白い肌と、菊の葉や花の色がお互いによく映え、その美しさを引き立て合っています。
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雲母摺りを施した背景に、花桶や着物の赤、そして菊やかんざしの黄色が鮮やかで美しい一枚です。
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