先月18~23日にかけて、東ヨーロッパにあるスロベニア共和国へ出張実演に行ってまいりました。
今回は国際交流基金さんからのご要請で、スロベニア第三の都市ツェリエにて開催中の「写楽再見」という展覧会にあわせ、若手摺師・山本による伝統木版画の摺り実演をご披露させていただきました。
写楽の作品とグラフィックデザイナーや現代美術作家が写楽をそれぞれ再解釈し表現した作品を紹介する「写楽再見」では、私どもアダチ版の大首絵28点を展示していただいています。展覧会は今月22日まで開催中です。 |
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<海外巡回展「写楽再見」開催中のスロベニア・ツェリエ現代芸術ギャラリー> |
スロベニアでも大人気!伝統木版画の技に拍手喝采
今回の実演は、展覧会開催中のツェリエ現代芸術ギャラリーと2010年に東欧4ヵ国の海外出張実演で訪れた、首都にあるリュブリャナ民俗学博物館の2会場で行いました。
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スロベニアの方々は浮世絵への関心が非常に高く、リュブリャナでの実演では用意していた60席があっという間に埋まり、立ち見のお客様も出るほどの大盛況!100名を超す方々にお集まりいただきました。 |
<満員御礼!リュブリャナ民族学博物館での実演> |
実演が始まると、摺師・山本の一挙手一投足をつぶさにご覧になっていました。 また摺り進めていくと同時に、和紙や版木・絵の具などの素材、ばれんや刷毛などの道具についてご説明しました。
「たくさん色を使っているのに、どうして色が混ざらないのか?」「木の素材は?ばれんは何で出来ているのか?」「絵の具は江戸時代と同じものなのか?」など、皆さん初めて見る素材や道具に興味津々のご様子。
楮(こうぞ)100%で作られた和紙の長くて丈夫な繊維の中に、ばれんを使って顔料を摺り込むことによって、木版独特の鮮やかな発色や柔らかな温かみのある風合いを作り出している旨を説明すると、ご理解いただけたようでした。
実演終了後には、摺りあがった作品を実際に手にとってご覧いただきました。凸凹になった和紙の表面を触ったり、顔を近づけて細部をじっくり見たりと、江戸時代の人々と同様に浮世絵を間近で楽しんでいただけたようです。版木や道具もじっくりご覧いただきました。
伝統木版画の技術を披露するだけでなく、次世代を担う後継者となる若い職人の成長も知っていただけた良い機会になったように思います。 |
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<リュブリャナ民俗学博物館の館長ボヤナさんと共に> |
日本から遠く離れたスロベニアの皆さんに木版技術へ深い関心を持っていただき、我々もたいへん嬉しく、とても良い文化交流となりました。ご参加いただいた皆さん、そして主催者の方々に感謝いたします!ありがとうございました。 |