広重と北斎


アダチ版画では引き続き、藍を用いて鮮やかに描き出された夏の情景の名作たちをご紹介しています。
前回のコラムでは、涼しげな青の浮世絵を大きく発展させた要因としてベロ藍をご紹介しました。今回は、そのベロ藍について詳しくご紹介いたします!

■「ベロ藍」は偶然見つかった!?


前回、『北斎「藍の傑作」に迫る』でご紹介した、浮世絵の美しい青を作り出す「プルシアンブルー」は西洋から輸入された化学的な合成顔料。18世紀初頭に発見されたこの絵具は、日本には延享4(1747)年に輸入されました。現在のベルリンで作られたことから、日本では「ベルリン藍」、省略されて「ベロ藍」と呼ばれるようになりました。

1704年、ベルリンの染料業者がいつものように赤色絵具を作ろうとしていた際、手元にアルカリがなかったので他の研究者のアルカリを借りたところ、偶然青色の沈殿物(プルシアンブルー)が生まれたそうです。

そう、実は、美しい青の表現を可能にした「ベロ藍」はたまたま発見された絵具だったのです。この青色絵具の誕生の原因が、借りたアルカリが動物の血液由来のものだったためと解明され、製法が確立すると「プルシアンブルー」は世界的に用いられるようになっていきました。




■「ベロ藍」ができるまで

今年の6月に「静岡科学館る・く・る」さんへ実演会でお邪魔した際に、「ベロ藍」を作るという実験を行ってくださいました。ベロ藍が合成される様子が大変興味深かったので、その様子をお伝えいたします!

淡い緑色の硫酸第一鉄(左)と、赤色のヘキサシアノ鉄(Ⅲ)酸カリウム(右)を、水によく溶かした溶液がこちら。
この二つを混ぜ合わせると …

黄色と赤褐色だった二つの液体が混ざり合った途端、不思議なことに青色の沈殿ができました!
混ぜ合わせた液体とはまったく違う色の液体ができた瞬間はとても驚きました。発見した染料職人もきっとこんな気持ちだったのでしょう。


出来上がった混合液をビーカーに出してみると、沈殿していた青色の絵具は少しドロッとしていました。

紙に着色してみると、見事な藍色が現れました。多くの浮世絵を鮮やかに彩ったベロ藍は、このように作られていたんですね!


■「ベロ藍」が彩る浮世絵

こちらは爽やかな青色が目に涼しい、葛飾北斎 冨嶽三十六景の一図「武州玉川」。

葛飾北斎 富嶽三十六景 武州玉川

葛飾北斎「武州玉川


葛飾北斎 富嶽三十六景 武州玉川

広がりを感じさせる吹き下げぼかしの美しい空も、

その冷たさが伝わってくるような澄んだ水の色も、

葛飾北斎 富嶽三十六景 武州玉川

偶然に発見された青色絵具「ベロ藍」から生み出されたことを考えると、さらに魅力的に見えてきますね。

「広重と北斎“藍色対決”! 藍色遣いで魅せる夏の浮世絵」はこちら >>

広重と北斎


アダチ版画では引き続き、藍を用いて鮮やかに描き出された夏の情景の名作たちをご紹介しています。
今回は、これまでにない表現を可能にした「新しい藍色の登場」をテーマに、北斎の名作を見てまいります!

■江戸のクールな流行「藍摺絵」


浮世絵風景画の代表作といわれる葛飾北斎『富嶽三十六景』には、藍色の濃淡だけで表現された「藍摺絵」と呼ばれる作品が存在します。クールでモダンな印象の藍摺絵は現代でも人気がありますが、藍を基調にして風景を表すという発想はいったいどこからやってきたのでしょう。

葛飾北斎 富嶽三十六景 武州玉川

葛飾北斎「武州玉川

天保2(1831)年に刊行された、柳亭種彦作「正本製」巻末の『富嶽三十六景』の広告記事を見てみると、「冨嶽三十六景 前北斎為一翁画 藍摺一枚、一枚に一景づつ追々出板、此絵は富士の形ちのその所によりて異なる事を示す」とあります。なんと、『富嶽三十六景』は当初、「藍摺絵」のシリーズとして出版されていたようです。
当時、富士講の流行をとらえ「富嶽三十六景」を企画した版元・西村永寿堂が、この「藍摺絵」を取り入れたのには、色でも人々を楽しませようとする意図があったのでしょう。

藍摺絵に使われていたのは、昔から使われていた「本藍」という渋めの藍と、当時西洋から輸入された「プルシアンブルー」の二種類の藍でした。プルシアンブルーは、化学的な合成顔料で、現在のベルリンで作られたことから、日本では「ベルリン藍」、省略されて「ベロ藍」と呼ばれました。

それまでの歌麿などの作品につかわれていた植物系の「つゆ草」や、渋い青色の「本藍」にはない鮮やかな青色の表現を可能にした「ベロ藍」。
当時の人々は、この新しい、透明感ある美しい青色「ベロ藍」の登場に熱狂し、この鮮明な青で摺られた浮世絵をこぞって求めたのです。


■藍摺絵の傑作!「甲州石班沢」

葛飾北斎 富嶽三十六景 甲州石班沢

葛飾北斎「甲州石班沢

ベロ藍の人気を踏まえて出版された藍摺絵は富嶽三十六景の中に10点ほどありますが、一番の名作というと「甲州石班沢」ではないでしょうか。随所に北斎の優れた感覚が伺えます。
本図は、富士山に面する鰍沢の南側にあった兎之瀬と呼ばれる渓谷付近をイメージして描いたものだと言われています。

葛飾北斎 富嶽三十六景 甲州石班沢

うっすらともやのかかるところから頭を出す富士山。アウトラインに用いられた趣のある本藍と、向こう側が透けて見えるような繊細な青を表現するベロ藍の使い分けが見て取れます。

何度かに分けてぼかしを入れた空が、画面全体に幻想的な雰囲気を与えています。

葛飾北斎 富嶽三十六景 甲州石班沢
《広がりのある空》

青のみで自然の美しさや厳しさを表現しようとする北斎の意図を汲み取り、一流の職人が2種類の藍を使い分けて摺り上げるこの作品は、名作ぞろいの富嶽三十六景の中でも根強い人気を誇る傑作です。



今回は江戸の流行「藍摺絵」から北斎の名作をご紹介してまいりましたが、いかがでしたでしょうか。
現在アダチ版画のオンラインストアでは、「広重と北斎"藍色対決"! 藍色遣いで魅せる夏の浮世絵」と題し、藍を用いて鮮やかに描き出された夏の浮世絵をご紹介しております。
「広重と北斎“藍色対決”! 藍色遣いで魅せる夏の浮世絵」はこちら >>

広重と北斎


現在、アダチ版画では、二大浮世絵師 “広重と北斎の藍色対決”と題して、藍を用いて鮮やかに描き出された夏の情景の名作をご紹介しております。
今回は、「夏の富士山」をテーマに、広重と北斎の浮世絵を見てまいります!

■躍動感あふれる北斎の富士「山下白雨」


北斎の富士といえば、「赤不二」こと「凱風快晴」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
今回ご紹介する「山下白雨」は、「赤不二」と同じく葛飾北斎の代表作『富嶽三十六景』の一図。「赤不二」に対して「黒不二」とも呼ばれる、夏晴れの富士山頂と麓の夕立を一図の中に描き表した作品です。

葛飾北斎 富嶽三十六景 山下白雨

『黒不二』
葛飾北斎「山下白雨
葛飾北斎 富嶽三十六景 凱風快晴

『赤不二』
葛飾北斎「凱風快晴

この二図を並べてみると、構図が似通っていることがわかります。

鱗雲が浮かぶ快晴の空に、山肌を赤く染めた富士をシンプルな配色で描いた「赤不二」は、どっしりと雄大で「静的な富士山」。
一方「黒不二」では、高くそびえたつ富士山の、躍動感が描き表されています。「赤不二」とは対照的な「動的な富士山」という印象を与える作品です。

よく似た構図にもかかわらず、「黒不二」が「赤不二」とは好対照な印象を与えるのはなぜでしょうか。
その秘密は「藍」も用いられている空の表現にありました。


■富士山の高さを可視化!?空の表現に注目!

「山下白雨」には、その名の通り富士山の麓のにわか雨が描かれています。
黒い雲に覆われ、稲妻の走るその下は、きっと真っ暗で激しい雨が降っていることでしょう。
重く立ち込める暗い雨雲は、私たちの生活する地上に近い、比較的低い位置に広がる雲。本図では、富士山の足元に描かれていますね。

葛飾北斎 富嶽三十六景 山下白雨
《黒雲と稲妻》

葛飾北斎 富嶽三十六景 山下白雨
《文様のような積乱雲》

少し上方、富士中腹の山際には、いかにも夏らしい積乱雲が立ち込めています。デザイン的に描かれた入道雲は藍色に和紙の地で摺られ、鮮やかな色合いの夏の空にもくもくと雲が広がる様子が目に浮かぶようです。
積乱雲は、その高さが10kmに及ぶこともある背の高い雲。その頭が山の中腹からひょっこりと顔を出して描かれており、富士山の高さを感じさせます。

さらに上方、急勾配で描かれた富士の山頂近くは快晴。
その空には藍色の吹き下げぼかしが加えられ、画面外への空の広がりも表現されています。

葛飾北斎 富嶽三十六景 山下白雨
《広がりのある空》

快晴の頂上と大雨の麓という天候の差を描くことで、富士山の高さを表現した「山下白雨」。
本図において、北斎は日本人の心象風景でもある夏の空の様子を巧みに描き表し、雲という舞台装置によって鑑賞者に富士山の高さを直感的に伝えることに成功しています。

■見事な対比で描かれた英姿 広重の富士「伊豆の山中」


歌川広重 富士三十六景 伊豆の山中

広重「伊豆の山中
通常価格  20,000円(税別)

限定特価 絵のみ 13,000円(税別)


一方こちらは、広重が北斎の「富嶽三十六景」に対抗して最晩年に描いたとされる「富士三十六景」の一図、「伊豆の山中」。
はっきりとした場所はわかりませんが、箱根峠から三島に至る道すがらだろうといわれています。

少し遠景から、堂々たる富士山を眺めたこの図に描かれているのは、夕暮れに差し掛かろうとする一瞬でしょうか。帰路を急ぐかのように前かがみで歩く人たちの姿も見えます。ひときわ小さく描かれた彼らは、この絵の中では自然の雄大さを引き立てる役割を果たしています。 歌川広重 富士三十六景 伊豆の山中
《小さな人影》

歌川広重 富士三十六景 伊豆の山中
《滝となって落ちる水》

こちらの「伊豆の山中」で最も特徴的なのは、その見事な色遣い。 夏の山の青々とした木々にはまぶしい緑が、滝となって勢いよく流れ落ちる豊かな水の表現には藍のぼかしが用いられています。

山並みの間から見える富士山は和紙の地を活かした白で大きく描かれ、周囲の鮮やかな深緑とのコントラストが富士山の存在感を際立たせます。

歌川広重 富士三十六景 伊豆の山中
《白と緑の美しいコントラスト》

歌川広重 富士三十六景 伊豆の山中
《奥行きの感じられる空》

少し雲がかかった空には、横長に浮かぶ雲を境に藍と赤のぼかしがかけられ、空の高さや奥行きが良く表わされています。


生命力あふれる夏の山と対比させて、静かにたたずむ富士山の英姿を描いた工夫溢れる一枚です。


今回は同じ「夏の富士山」を題材に取っているものの、まったく違った魅力を持つ2図をご紹介いたしましたが、いかがでしたでしょうか。
現在アダチ版画のオンラインストアでは、「広重と北斎"藍色対決"! 藍色遣いで魅せる夏の浮世絵」と題し、藍を用いて鮮やかに描き出された夏の浮世絵をご紹介しております。
「広重と北斎“藍色対決”! 藍色遣いで魅せる夏の浮世絵」はこちら >>


アダチ復刻事業の礎 謎の絵師・東洲斎写楽の全貌に触れる


現在開催中の企画展「アダチ復刻事業の礎 謎の絵師・東洲斎写楽の全貌に触れる」では、写楽の作品だけでなくアダチ版画の復刻事業についてご紹介いたしております。

今回、彫師歴50年を超える親方の新實がこれまで培った経験をもとに、写楽について語ってもらいました。
本コラムでは、彫師から見た写楽の魅力をご紹介いたします。

■企画展関連コラム「彫師からみた写楽の魅力とは?」

新實は、大学生の時、展覧会で目にした写楽の作品に感銘を受け、彫師を志しました。当時は彫師と摺師がいることすら知らなかったものの、「こういうものを彫ってみたい」という強い思いを抱き、1965(昭和40)年、彫師の名人と言われた大倉半兵衛氏の門を叩きました。大倉氏が亡くなるまでの8年間、「半兵衛最後の弟子」として彫師の修行をした後、1973(昭和48)年にアダチ版画研究所へ入りました。
これまで、浮世絵の復刻版はもとより、日本画の巨匠の作品をはじめとする現代の木版画作品などたくさんの作品を手がけました。現在、その力量は第一人者として広く認められています。



Q.彫師としての視点から、絵師としての写楽を見るとどうですか?

新實:実際に写楽を彫ってみると、一本たりとも余分な線がないことに改めて気づかされるね。一般的にもよく言われることだけれど、写楽の作品は、最小限の線や色数で最大限の効果を生むように描かれているから、当然、線は少ない。
写楽ならではの独特な表情や、手の躍動感を出すための線を彫るのは特に難しいね。
あと、彫師になってからは、「写楽は役者に嫌がられるほど個性を誇張しすぎている」という世間の認識とはちょっと違う感じ方をするようになったかな。

彫師・新實


浮世絵師について書いた『浮世絵類考』には、写楽について「あまりに真を描かんとて あらぬさまにかきなせしかば 長く世に行われず 一両年にして止ム」と記されています。
このように「写楽は役者を美化せずに、大げさなまでに個性を強調して描いている」というのが世間一般的な写楽の評価ですが、新實の言う、世間の認識とは違う感じ方はどの様なものなのでしょうか。


■新實の思い出の一枚から見る「写楽の役者絵」

新實:確かに女形ならば、リアルに描くことで嫌がられるということはあったかもしれないけれど、男に関しては、写楽は他の絵師よりも数段魅力的に描いていると思う。
例えば、市川高麗蔵なんかを見てみると、写楽の高麗蔵はずいぶんと愛嬌がある。

大学生の時に、たまたま展覧会で見た写楽の「二代目市川高麗蔵の志賀大七」にとっても感銘を受けて、彫師を志すことになった。
そういう意味で、今でも思い出深い作品だね。
そもそも「志賀大七」は悪役だから、普通この役の高麗蔵を描いた作品は、とても目つきの悪い、いかにも悪役らしい姿で描かれている。
それに対して写楽は、役者の本来の魅力を描き出しているように思う。その時演じている役柄にとどまらずに、役者自身の人間的な魅力までとらえているように感じるね。

新實の思い出の一枚
二代目市川高麗蔵の志賀大七

東洲斎写楽
「二代目市川高麗蔵の志賀大七」




勝川春英 二代目市川高麗蔵 志賀大七

勝川春英
「二代目市川高麗蔵 志賀大七」



ここで、写楽と同時期の絵師・勝川春英が描いた「二代目市川高麗蔵 志賀大七」の作品を見てみましょう。
2枚の役者絵を見るに、二代目市川高麗蔵は面長な顔に高いかぎ鼻、しゃくれた顎を持つ人物だったようです。
これらの特徴を、春英はやや控えめに、一方の写楽は、顔はより長く、鉤鼻は鋭く曲げて、顎もしっかりと前に出して描き、役者の特徴をより克明に表現しているように見えます。
役者を美化し、「志賀大七」として描いた側面の強い春英の作品に対し、写楽の作品はまるで高麗蔵の似顔絵のよう。目元に注目すると、すこし丸みを帯びた目の形がなんだか愛らしく見えてきませんか?新實の言う『役者自身の人間的な魅力』も、そのあたりにあるのかもしれませんね。


今回、彫師新實から話を聞くことで、リアリティをもって役者を内面まで描き出した写楽の姿が見えてきました。大げさなまでに個性的な大首絵も役者自身の魅力を表現したものと考えると、また違った面白みが出てきますね!


現在、アダチ版画 目白ショールームでは、企画展「アダチ復刻事業の礎 謎の絵師・東洲斎写楽の全貌に触れる」を開催しております。
今回ご紹介した「二代目市川高麗蔵の志賀大七」をはじめとする写楽の黒雲母の大首絵全28図を中心に写楽の傑作のほか、アダチ版画が昭和初頭の創業以来続けてきた復刻事業の歴史をご紹介する貴重な資料も展示中です。6月30日(日)までの開催となります。是非、お出かけください。



■開催概要

企画展「アダチ復刻事業の礎 謎の絵師・東洲斎写楽の全貌に触れる」
会 期
 2019年6月15日(土)~6月30日(日)
休 館
 月曜日
会 場
 アダチ版画研究所 目白ショールーム
 詳細はこちら >>



アダチ復刻事業の礎 謎の絵師・東洲斎写楽の全貌に触れる


現在開催中の企画展「アダチ復刻事業の礎 謎の絵師・東洲斎写楽の全貌に触れる」では、写楽の作品だけでなくアダチ版画の復刻事業の歴史もご紹介いたしております。今回コラムでその一部をご紹介いたします。

■企画展関連コラム「復刻版とは?そして、アダチ復刻への想いは?」

アダチ版画研究所では、昭和初期の創業以来、これまでに約1,200種類の浮世絵復刻版を制作してまいりました。その中でも、創業者の安達豊久が特に情熱をもって取り組んだのが「東洲斎写楽」の全図完全復刻です。
現在開催中の企画展に合わせ今回は、意外に知られていないそもそも「復刻版とは?」といった素朴な質問に答えるとともに、写楽の全復刻を成し遂げた創業者の復刻への想いもご紹介いたします。



 


Q.そもそも「復刻版」とは?

A.
江戸時代に出版された浮世絵(オリジナル)は、明治以降、海外において日本の美術工芸品の一つとして高い評価を得るようになります。
コレクターも出現し、海外での需要が高まると、ヨーロッパを中心に良質な浮世絵が大量に輸出されました。

しかし、オリジナルの浮世絵には数に限りがあります。そこで、オリジナルと同じ木版技術で制作出版されるようになったのが浮世絵の復刻版です。

多くの版元から復刻版が出版されましたが、その制作方針は、摺られた当時の色を色鮮やかに再現しようとするもの、今残っているオリジナルのように古めかしい色にしようとするものなど様々です。お客様の嗜好に左右され、時代によっても異なります。

現在のアダチ版復刻浮世絵は、和紙に水性の絵具で摺ることにより生まれる木版独特の発色、摺られた当時の色を楽しんでいただきたいとの想いで制作しています。






↑写楽研究の原点
クルト「SHARAKU」
初版本(1910)

↑オリジナルを参考にした
専門家による復刻の資料

Q.アダチ版画研究所の創業はいつ?

A.
創業者の安達豊久(1902-1983)は、中学を卒業してすぐ雑誌社に勤務し、復刻版の浮世絵を出版する仕事に就いた後、1928年頃に独立してアダチ版画研究所を興しました。

若い時から浮世絵に触れる中で、浮世絵の魅力を正しい形で世に知らしめたいという想いで、復刻事業を始めました。
良い作品をつくるために、当時一流の技術を持った彫師と摺師を集め、一つ屋根の下で仕事をする工房形式を確立しました。

アダチ版画研究所は今なおこのスタイルを続け、高品質の木版画の制作に努めています。


企画展では、当時資料が少ない中どのように復刻版をつくっていたかをご紹介する資料の展示もしております。是非、目白ショールームまでお出かけください。



↑創業者 安達豊久(左)


↑アダチ版画
昭和の工房(摺)風景


■開催概要

企画展「アダチ復刻事業の礎 謎の絵師・東洲斎写楽の全貌に触れる」
会 期
 2019年6月15日(土)~6月30日(日)
休 館
 6月24日(月)
会 場
 アダチ版画研究所 目白ショールーム
 詳細はこちら >>



■関連情報

関 連 番 組
NHK Eテレ日曜美術館「熱烈!傑作ダンギ 東洲斎写楽」
放 映 日 時
  6月23(日) 午後8時~(再放送)
これまでの写楽は誰か?という視点ではなく「写楽の表現」について、様々な分野の専門家が話をしながら写楽の魅力を見つけていく番組です。アダチ版画研究所が写楽作品全図の復刻をしていることから、今回第一期の黒雲母作品28点を会場に並べていただき、絵柄というだけでなくプロダクトとしての魅力もお伝えいただいております。是非皆さまご覧ください。



金魚づくし


■コミカルな金魚たちの世界 歌川国芳「金魚づくし」とは?

近年、国内外で展覧会が数多く開催され人気急上昇中の浮世絵師・歌川国芳。その国芳が手掛けた浮世絵シリーズ「金魚づくし」は、金魚に加えてカエルやカメなどの水中の生き物たちを擬人化し、ユーモアたっぷりに描かれています。

笑い、走り、歌い、踊る金魚たちの姿は、見る人を思わず「カワイイ」と微笑ませてしまうほど生き生きとしてコミカル。江戸時代後期には、金魚は庶民の間でもペットとして飼育されるようになりました。そんな自分のペットの様子を描いた浮世絵に、江戸っ子たちは夢中になったことでしょう。

近年、日本のポップカルチャーを形容する単語として世界に定着しつつある"Kawaii"の歴史は、こうして江戸時代の浮世絵、国芳の「金魚づくし」の中に既に見ることができます。




百ものがたり


怪談話で化け猫が出たぞ!

さらいとんび


あ!トンビに油揚げを
さらわれた!

玉や玉や


しゃぼん玉売りが来たよ!




酒のざしき


金魚たちの大宴会!

まとい


さぁ、火事だ火事だ

にはかあめんぼう


にわか雨?あめんぼう!!




そさのおのみこと


ヤマタノオロチならぬ、
ウナギ退治!

いかだのり


ひれをまくって男らしく

ぼんぼん


団扇を持って、
ぼんぼん唄で練り歩こう



今回は、このユーモア溢れる笑って楽しい「金魚づくし」をもっと夏らしく楽しめる、新しい飾り方をご紹介します!



■スタイリッシュな「金魚づくし」の新提案

●人気の「金魚づくし」シリーズを
すっきりと涼やかに飾っていただけるアクリル額が新登場!



浮世絵の両側を透明のアクリル板で挟んで飾る額で、見た目もとても爽やかです。

実はこちらのアクリル額、1つの額で2通りの飾り方がお楽しみいただけるんです!

金魚づくし アクリル額


〇自由自在に飾り方を変更〇

飾り方の変更方法はとっても簡単!
付属の金具を付け替えることによって、壁掛け式からスタンド式の額に早変わりする仕組みです。

額の上部の脚を外し下の脚に連結することで、スタンドタイプへ変更できます。



■涼やかに飾って楽しむ!

「金魚づくし」は通常の浮世絵の半分ほどの大きさで、額の大きさも縦が約38cm、横幅が約29cmとコンパクトサイズ。壁にかけるにも立てて飾るにも、玄関やリビングなどのちょっとしたスペースに飾ることができるのがその大きな魅力です。シンプルなアクリル額は、場所を選ばず飾っていただけるので、初めて浮世絵を飾るという方にもオススメです。

金魚づくし アクリル額

◎壁にかけて楽しむ

浮世絵の裏に隠れるように取り付けられたフックで、壁にかけて飾ることができます。付属の金具によって、額を壁から平行に浮かせて飾れるように作られており、伝統的な浮世絵も、奥行きを持たせてモダンな雰囲気で飾ることができます。




◎スタンド式で立てて楽しむ

こちらは壁に穴を開けられない方や、掛ける場所がない方に特におすすめの飾り方です。縁取りのないアクリル額は空間を邪魔せず、どんな調度品ともマッチします。

金魚づくし アクリル額



爽やかなアクリル額で「金魚づくし」シリーズを飾ることで、まるで金魚鉢を置いたように涼しげな空間をお楽しみいただけます!




■セット購入でお得!アクリル額1点&Tシャツ プレゼント

笑って楽しい「金魚づくし」は、各図8,000円(税別)とお手頃価格。
もちろんシリーズで揃えるほどに、面白さも倍増するので、ぜひ9図揃えてお楽しみください。
9図セットなら65,000円(税別)と7,000円分お買い得です。


さらにセット購入特典として、アクリル額1点&特製Tシャツ をプレゼントいたします。この機会に、ぜひお求めください。

※特製Tシャツのサイズについて、S・M・L・XLの中からご希望のサイズを注文画面の備考欄にご明記ください。


広重が描いた 日本の雨 いろいろ


6月に入り、いよいよ梅雨がやってこようとしていますね。

春、静かに降る雨を「春雨」、明るい空にふるにわか雨を「白雨」、夏の午後に降る激しいにわか雨を「夕立」と、雨を表現する言葉が様々にあるように、雨は私たちにいろいろな表情を見せてくれます。

憂鬱な気分になりがちな雨の季節、叙情豊かな雨の表情を巧みに描き上げた広重の浮世絵で楽しんでみてはいかがでしょうか。



広重・雨の浮世絵の定番!「大はしあたけの夕立」


ゴッホが模写したことでも知られる「大はしあたけの夕立」は、広重晩年の大作「名所江戸百景」の一図。


橋を大胆に上から見下ろした竪長の画面が、雨脚の激しさに加速度感を与え、対岸の安宅の御船蔵や家々がシルエットのように霞んでいる様子からも、雨の層の厚さが想像されます。

ぼんやりとかすんだ対岸と大橋とが、画面中央の隅田川の広い水面を三角形に切り取り、画面に動きを与えるとともに、雨の隅田川の水の量感を見事に示しています。

すべてにおいて無駄のない画面構成と、真に迫る夕立の描写が魅力的な定番の一枚です。

歌川広重 大はしあたけの夕立
広重「大はしあたけの夕立
絵のみ 13000円(税別)


オンラインストア初登場!夕暮れ時の雨を描いた団扇絵「安倍川」

駿府城の城下町として発展した静岡県・府中の宿のあたりの雨の風景を描いた「安倍川」は、「東海道河づくし」の一図。

茜色の薄いぼかしで夕暮れ時の雰囲気が演出され、遠景には安部川を渡る人々の様子も細かに描かれています。
雨が降りつける中、画面手前の旅の一行は足早に川渡へ向かいます。

街道の両脇に青々と繁茂する草から想像するに、梅雨時の風景でしょうか。爽やかに雨を描いた団扇絵は、じめじめとした梅雨の空気をも吹き飛ばしてくれそうです。


歌川広重 安倍川
広重「安倍川
通常価格  20,000円(税別)

限定特価 絵のみ 13,000円(税別)


荒れた天候も見事に表現!「美作 山伏谷」

歌川広重 美作 山伏谷
広重「美作 山伏谷
通常価格  20,000円(税別)

限定特価 絵のみ 13,000円(税別)

岡山県北東部の美作国の渓谷を描いた「美作 山伏谷」は、「六十余州名所図会」の一図。


画面右手の切り立つ奇岩は、山伏の修業の場であったという険しい渓谷を描いたものと思われますが、その姿は激しい雨風に半ば隠れています。

画面上部にはぼかしで表現された黒い雲が立ち込め、画面全体を横切る大胆な風の表現からは視界をふさぐような激しい勢いが感じられます。

旅人たちも笠を飛ばされたり激しい向かい風に立ち往生したりと、臨場感あふれる作品です。




広重「白雨」くらべ

江戸時代、日本橋は各地への街道の起点となった場所で、魚河岸もあり、活気にあふれていました。
そのため、名所絵に描かれることは多く、特に名所絵を得意とした広重は、傑作をたくさん残しています。

そのうちの一図といえるのが本図、東都名所「日本橋白雨」です。


東海道五拾三次の「庄野白雨」と並べてみると、庄野の坂を橋に換えて描いているようにも見え、構図は大変似ているようです。
そして、傘には版元名をいれるあたりも広重らしさを垣間見ることができます。

歌川広重 日本橋白雨
広重「日本橋白雨
絵のみ 13000円(税別)


「庄野白雨」は、線というよりは、面として束で描かれることによって、激しく、そして、向かい風に拮抗していく緊張感があります。

一方、「日本橋白雨」の雨は、線で描かれ間隔もあるため、にわか雨でも柔らかい空気が画面に広がって見えます。そして中央に描かれた雨にかすんだ富士山が何とも安定感ある作品にしています。



歌川広重 庄野 白雨

広重「庄野 白雨
絵のみ 13000円(税別)


夜の激しい雨を描いた「江戸近郊八景 吾嬬杜夜雨」



こちらは、広重の傑作に数えられるシリーズ「江戸近郊八景」の一図。もとは狂歌仲間への配り物として描かれた特注品です。
本図は現在の墨田区立花にある吾嬬神社辺りの、夜の雨の風景を描いたもの。
斜めに描かれた無数の線が、打ちつける雨の強さを物語っています。田んぼ道には幟がはためき、土手の上にはすれ違う蓑と傘の人々の姿が見えます。
強い雨風が手に取るように感じられ、広重の表現力が良く表れている一図です。

歌川広重 吾嬬杜夜雨
広重「吾嬬杜夜雨
通常価格  20,000円(税別)

限定特価 13,000円(税別)


まっすぐに伸びる雨の線が印象的な「江戸名所 浅草金龍山遠望」



小林清親 東京新大橋雨中図
小林清親「浅草金龍山遠望
通常価格  20,000円(税別)
       ↓
限定特価 13,000円(税別)



こちらは船上から浅草の金龍山を望む情景を描いた一枚。
画面の中ほどに描いた遠景の金龍山を境に、上部に空、下部には近景の舟を配し、縦長の構図の中で巧みに空間の広さを表現しています。
画面の上から下までまっすぐに伸びる雨の線が、この構図をより印象深いものにしています。


「広重が描いた 日本の雨 いろいろ」はこちら >>



明治の広重・清親の雨「東京新大橋雨中図」

こちらは明治の広重と呼ばれた小林清親の代表作「東京名所図」の中の一図。

「光線画」と呼ばれる西洋画の影響を受けた光と影の描き方が脚光を浴びました。

雨雲のかかる空の明暗や、水の映り込み、雨線を描かず雨を表現する描写など、それまでの浮世絵にはない表現が見られ、江戸から明治へ移り変わる時代の大きな変化が伺えるようです。

画面の端に小さく描かれた女性の後ろ姿が印象深く、物語を感じさせる作品です。


小林清親 東京新大橋雨中図
小林清親「東京新大橋雨中図
通常価格  20,000円(税別)

限定特価 絵のみ 13,000円(税別)

現在、こちらの作品も、期間限定特別価格にてご提供中!



また、目白ショールームでも、叙情溢れるさまざまな雨の浮世絵を展示中です。
いろいろな表情を持つ日本の雨の情景が描かれた浮世絵で、今年の梅雨を楽しんでみませんか。


あわせてお楽しみいただきたい「雨の浮世絵」はこちら >>
江戸の桜でお花見 桜を描いた浮世絵を楽しむ


アダチ版画では、現在「江戸の桜でお花見 桜を描いた浮世絵を楽しむ」をテーマにご自宅でお花見気分を味わっていただけるよう、様々な趣向の桜景色をご紹介しております。


日本人の心を惹きつけてやまない「桜」。 江戸当時の桜の輝きを感じていただけるアダチの浮世絵から、お部屋でゆったりとお花見気分が楽しめる広重の名作「隅田川水神の森真崎」をご紹介いたします!


■ゆったりと楽しむ、広重のお花見―名所江戸百景「隅田川水神の森真崎」

歌川広重は叙情性豊かな作風を得意とし、景色を描く中にも季節感を大事にしていました。花鳥画にも優れた作品を数多く残しており、 繊細な季節の情緒を巧みに表現していたのです。そんな広重の傑作のひとつが、名所江戸百景隅田川水神の森真崎」です。

桜の名所として知られる真崎を、向島から隅田川の対岸に望んだ風景が描かれる本図。前景に桜の花と、その眼下を流れる隅田川と水神の森を、遠くには筑波山を描き、ゆったりと広がりのある風景を表現しています。
全体に柔らかな色遣いで纏められ、近景の桜の花と遠景の淡い紅の春霞に浮かぶ筑波山が、春らしいのどかさを感じさせます。画面上部のぼかしや水際に使われている藍の色と、桜のピンクとのコントラストが非常に爽やかな一枚です。

隅田川水神の森真崎

■大胆な構図で描かれた満開の八重桜

隅田川水神の森真崎

隅田川水神の森真崎」は、なんといっても画面手前に咲き誇る八重桜が印象的です。風景画では遠景に描かれることが多い桜を近景に配置し、花を極端なクローズアップで描いた珍しい構図は、風景画でありながらまるで花鳥画のような趣を感じさせます。
こちらに伸びる枝の先に大きく花をつけた八重桜を、広重は花弁一枚一枚丁寧に描いています。細やかに描かれた桜に春爛漫の風情が漂い、画面いっぱいにうららかな春の陽気が漂っているようです。


見事な景観を主役に、まばらに描かれた人々が思い思いに景色を楽しんでいる様子からも、のどかな春に、ゆったりと流れる時間が感じられる作品です。

繊細な季節の情緒を捉える広重の目線で、みなさまもお花見気分を味わってみてはいかがでしょうか。

歌川広重 名所江戸百景「隅田川水神の森真崎」



■インパクトなら 北斎の桜

現在、六本木森アーツセンターギャラリーで開催中の「新・北斎展」で、浮世絵そして北斎の人気が高まっています。森羅万象の本質を描き出すことに挑戦し続けた北斎が描いた桜は、パッと目を引く華やかな美しさが魅力です。

オーダーメイドとして贅を尽くして作られた「桜花に富士図」、藍の背景が印象的な垂桜「鷽に垂桜」、そして、庶民が楽しむお花見の様子を富士とともに描いた「東海道品川御殿山ノ不二」。
多才な北斎の桜もお楽しみください。




葛飾北斎「桜花に富士図」
葛飾北斎「桜花に富士図」



葛飾北斎「鷽に垂桜」
葛飾北斎「東海道品川御殿山ノ不二」
葛飾北斎「鷽に垂桜」 葛飾北斎「東海道品川御殿山ノ不二」



広重・北斎のほかにも、様々な趣向が凝らされた桜の数々が目白押し!
「江戸の桜でお花見 桜を描いた浮世絵を楽しむ」はこちら >>
晴れの日に飾る 新春の浮世絵

新しい一年の始まりであるお正月。お正月に行われる行事には、旧年を無事に過ごせたことへの感謝と新年を迎える喜びが込められています。江戸の人々の暮らしと深く結びついた浮世絵にも、おめでたい正月にふさわしい図柄が描かれています。晴れの日を演出する華やかな浮世絵を飾って、新たな一年を迎えてみてはいかがでしょうか。

2017年に大英博物館で開催された展覧会をはじめ、国内海外問わず絶大な人気を誇る葛飾北斎。2019年1月17日(木)からは六本木の森アーツセンターギャラリーにて「新・北斎展 HOKUSAI UPDATED」が開催されるなど、ますます北斎ブームが盛り上がりを見せています!

そこで今号から3回にわたり、お正月のお部屋を彩るにふさわしい北斎が描いた"特別な浮世絵"をご紹介し、その魅力に迫ります!


オーダーメイドの贅沢品!? 北斎の"特別な浮世絵"とは...?

現在でも絶大な人気と知名度を誇る、北斎の代表作「凱風快晴」や「神奈川沖浪裏」は、世界中に現存する作品の状態やその数から、江戸時代当時に何千枚も摺られたと考えられています。

その一方で、わずかな部数しか摺られなかった"限定品"のような浮世絵版画もありました。それが『摺物(すりもの)』と呼ばれるものです。

凱風快晴

摺物とは一般に広く販売された浮世絵版画とは異なり、主に句会や狂歌連といった同好の仲間内で配ったり、交換したりする目的で作られたオーダーメイドの浮世絵版画。販売ことが目的ではなく、純粋に風雅を楽しむために作られた摺物は、一部の人々の間にしか出回らない珍しくて贅沢なものでした。

摺物には、お祝い事や記念の品物としての意味合いが強く、縁起の良い図柄が描かれています。版木の枚数や色数など制約の中で表現する市販の浮世絵とは異なり、最高級の和紙に贅沢な絵具を用い、淡い色合いを何度も摺り重ね上品で繊細な色合いを表現したり、版木に色を着けずに摺る"空摺(からずり)"を入れたりと、手間を惜しまず贅を凝らして作られているのが特徴です。

では、実際に北斎の摺物を見ていきましょう!


とにかくおめでたい!! 七福神が踊り歩く「踊行列図」

まず今回ご紹介するのは、北斎が手がけた摺物のひとつ「踊行列図」。細長い縦長の画面に、楽しげに踊りながら練り歩く老若男女7人が描かれています。各々の個性豊かな服装から見ると、どうやら仮装行列の踊りのようです。画面の一番上にいるおじいさんが持つ、大きな傘に描かれた宝づくし文様から、本図の画題は縁起の良いものだと考えられます。

日本各地に伝わる縁起の良い仮装行列の踊りには、七福神に仮装して踊る「七福神踊」や「七福神舞」というものがあります。実は、本図に描かれた彼らは、それぞれ七福神になぞらえて見ることができるんです!

では、上から順番に見ていきましょう。


  踊行列図

まずは一番上のおじいさん。七福神の中でおじいさんといえば寿老人です。赤い頭巾は今も還暦祝いの際にかぶりますね。健康と長寿延命の神様である寿老人にぴったりのモチーフです。

その下の黒い着物の男性。黒となると大黒様でしょうか。頭巾をかぶり、腕を高く上げているのは、打ち出の小槌を掲げるポーズに見えなくもありません。

笠をかぶった人物は、恵比寿様と考えられています。京都の十日えびすで、初えびすの際にのみ配られる、縁起物の「人気笠」にちなんでいるのでしょうか。

頭に赤い扇子をくくり付けているのは、毘沙門天でしょう。きっと兜のつもりですね。
 
お腹の飛び出たおじさんは、布袋さんでしょうか。かざした扇子は布袋さんのシンボルである団扇の代わりかも。


女性2人は弁財天と吉祥天だと考えられます。2人とも似たようないで立ちをしていますから、どちらがどちらか判別するのは難しいですね。そんなところまで、混同されがちな弁財天と吉祥天にそっくりです。

上側にいる女性の紫の着物には、観世水紋という水をモチーフとした文様が入っているので、こちらの女性がインドの水の神様が元の姿である弁財天なのかもしれません。


縁起の良い図柄で作られた摺物のなかでも、七福神に扮した老若男女が楽しげに踊り歩く「踊行列図」は、特におめでたい一図。新しい一年のスタートを飾るのにピッタリの作品。

是非、知る人ぞ知る北斎の縁起の良い名品を飾って、お正月の晴れの日を華やかに彩ってみてはいかがでしょうか。

 

縁起ものづくしで慶事にオススメ「姫小松に海老」

次にご紹介するのが、画面いっぱいに立派な伊勢海老が描かれた「姫小松に海老」です。
太くピンと張った髭や尾の内側に施された精密な描線など、細部に至るまで描き込まれた本図からは、北斎の並々ならぬ描写力がうかがえます。

"えび"は腰をくの字に曲げた老人の姿に見立てて「海老」と書き、その海老の代表格である伊勢海老は古くから長寿の願いを込め、鯛と並んで祝い事には欠かせないおめでたい食材とされてきました。主題である伊勢海老はもちろんのこと、その他にも本図には縁起の良いモチーフがいくつも描かれています。

それでは、実際に描かれている縁起物にそれぞれどんな意味があるのでしょう。


姫小松
一年を通じて緑の葉をつけ、千年の樹齢を保つとも言われる松。若い松には、さらなる飛躍の意味もあります。また、二葉一組の松葉の形は、仲睦まじい夫婦に例えられます。
 
 
  伊勢海老
腰が曲がるまで元気に長生きできるとの意味から、長寿の象徴とされています。また脱皮を繰り返して成長を続ける海老は、立身出世の意味合いも。また赤い色は、古代から邪気を払う魔よけとして用いられてきました。
 
踊行列図
 
千両の実
江戸時代、1,000両の財産を有すれば、お金持ちとして番付に載りました。お正月のお飾りにもよく使われる千両の実は、富の象徴とされています。
 
 
  搗栗(かちぐり)/椎の実
「勝ち」の音に通じることから、縁起物として出陣前に食すなど、勝利の祈願や祝儀に用いられてきました。また、椎の実はどんな環境でも発芽することから、忍耐強さを表しています。


縁起の良いものがこれほどまで揃った北斎「姫小松に海老」。北斎が手がけた摺物の中でも、逸品といっても過言ではないでしょう。新しい一年を迎える晴れの日はもちろん、慶事にもオススメの作品を飾ってお楽しみください。



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没後160年記念 広重 月の名作選

浮世絵のアダチ版画では、今年没後160年を迎えた広重に注目が集まる中、秋にピッタリの「広重月の名作撰」を企画いたしました。ご好評につき9月30日まで期間延長になった本企画を通して広重の魅力に迫ってまいります!

風景画だけではない!広重の魅力が満載の花鳥画はなぜ生まれた??

浮世絵というと、一般的には美人画、役者絵そして風景画を連想する方が多く、花鳥画をイメージする人はすくないかもしれません。しかし、風景画の絵師として人気の広重も、大変多くの花鳥画を残し「月に雁」は代表的な作品となっています。


江戸庶民の嗜好を常に表現してきた浮世絵の世界において、遊郭のあった吉原の繁栄から美人画が生まれ、歌舞伎人気が役者絵を生みました。そして、東海道など街道の整備と庶民の経済力の向上により旅をする余裕ができると風景画が出版されるようになりました。

月に雁 三日月に松上の木菟 月夜木賊に兎

では、花鳥画は、なぜ一つのジャンルを確立するほど出版されていたのでしょうか。色々な要因があるとおもいますが、今回は広重の花鳥画の中でも特に季節感あふれる情景を描いた、心和む月を描いた中短冊サイズ名作3点を紹介しながらその謎を考えてまいりましょう。

左から月に雁三日月に松上の木菟月夜木賊に兎

 

俳句や和歌と共に味わう広重の詩的な世界

広重が花鳥画の中でも多く作品を残したといわれているのが中短冊サイズの作品です。「東海道五十三次」のように大錦サイズといわれる一般的な浮世絵のサイズのちょうど半分のサイズになります。

日本で鎌倉時代の頃から歌人の間で使われていた短冊という形式を花鳥画のジャンルに用いることにより、俳句や和歌に詠まれた世界を江戸の庶民の人々に絵を通して広重は伝えようとしていたと考えることもできそうですね。


月に雁

「こむな夜か 又も有うか 月に雁」

「三日月の船遊山(ふなゆさん)してみみづくの 耳に入(いれ)たき松風の琴」

三日月に松上の木菟
月夜木賊に兎

「夜はいとど 草のむしろに 露おきて 兎の妻も 寝つきかぬらん 河廼屋幸久」



北斎が造形的な美しさを描写し尽くすことに注力するのに対して、広重は、俳句や和歌といった文学的要素を加味しながら詩的世界を表現することを大切にしていたのでしょう。江戸の庶民はもちろんのこと、現代の私たちの心を動かす表現の豊かさは、風景画だけでなく花鳥画においても発揮されています。

花鳥画というジャンルは、江戸時代の園芸ブームがあったことが一因であるとも言われていますが、数多く残された広重の短冊の作品を見ていくと、江戸の人々に癒しを与えるもので、常に身近な生活を彩るためのものとして出版されていたと素直に捉えることも出来そうですね。

広重の中短冊の世界を満喫するのにオススメ! 短冊専用額



アダチ特製浮世絵専用額(短冊)

これまでご紹介してまいりました広重の短冊の世界を楽しんでいただくため、アダチ版画がオススメするのが「アダチ特製浮世絵専用額(短冊)」です。

通常ご紹介している大判額(外寸55.5×40.0cm)よりもひと回り小さい(外寸50.0×32.0cm)短冊専用額です。「月に雁」など短冊の花鳥画を一番美しくみせることができるように余白を調整いたしました。

是非、秋の夜長に、広重が描いた月の短冊の詩的世界を身近に味わってみてはいかがでしょうか?

 

■ 注文方法
オンラインストアでのご注文の際は、ショッピングカートに「アダチ特製浮世絵専用額(短冊)」とご希望の作品(額なし)をお選びください。ご希望の作品を額装した状態でお送りいたしますので、届いたらすぐに飾ってお楽しみいただけます!

注文画面


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品質へのこだわり

品質へのこだわり

アダチの浮世絵は、手にして初めて分かる、熟練の技術と日本の伝統が詰まっています。

製作工程

制作工程

一切機械を使うことなく一枚一枚職人の手仕事により丁寧に作られている木版画です。

厳選素材・道具

厳選素材・道具

江戸当時の風情を感じられる当時の浮世絵の再現にこだわり、厳選した素材と道具を使用。

職人紹介

職人紹介

最高の作品を創り出すために、日々技術の研鑽を積む熟練の職人たち。

浮世絵の基礎知識

浮世絵の基礎知識

意外と知らない?浮世絵の世界。浮世絵の基礎知識をご紹介。