新作復刻完成

 

秋も深まり、山々の紅葉が美しく色づきはじめる時季。
このたび、アダチ版画では紅葉に色づく秋の名勝を描いた歌川広重の傑作「甲斐 さるはし」を新たに復刻いたしました。

アダチ版画は、江戸の庶民と同様に現代の方々にも浮世絵の摺りたての鮮やかさや質感を楽しんでいただくためにオリジナルの浮世絵に忠実に、そして初摺といわれる絵師と版元の意向が詰まった作品を参考にしながらこれまで、1,200種を超える復刻版を制作してまいりました。
そして、年に1回程度ではありますが、現在でも新しい作品の復刻をしています。

江戸時代と同じ素材を使用し、脈々と受け継がれる知識と技に基づいた職人たちの高い技術をもって復刻することでアダチ版画だからこその質の高い作品を皆様にお届けすることを目指しています。

復刻記念コラムvol.2の今回はそんなアダチの誇る、現代の職人たちが技術を結集し復刻した「甲斐 さるはし」を制作の視点からご紹介していきます。

 

「甲斐 さるはし」を彫る・摺る


分業制の浮世絵の制作において、絵師・広重が描いたのは、「版下絵(はんしたえ)」と言われる輪郭線だけ。

彫師と摺師は200年の時を越え、広重が線にこめた思いをくみ取り作品を完成させていきます。そこには職人たちの密かなこだわりと工夫があります。 アダチ版画の彫師・摺師に今回の「甲斐 さるはし」制作のポイントを訊ねてみました。

版下絵
歌川広重 「甲斐 さるはし」版下絵

 

◎彫師・新實に聞く

     

 

彫師・新實

「作品の復刻をするには、描かれている線をまず自分のものにしなければいけないからね。まず複数のオリジナル作品を丹念に調べて、線を理解して自分の中に落とし込む作業から始めるんだよ。

特に今回のさるはしは紅葉の部分の主線がみえづらくて、多くのオリジナルを見て、それぞれのオリジナルの線を自分の中で重ね合わせ、つなげていってはじめて線のタッチを理解することができた。
これは多くのオリジナルについての資料を持つアダチ版画にいるからこそできたことだと思うよ。色版を作るときは、さるはしのオリジナルは色が曖昧な部分が多かったので、どの色で表現されているかを判断するときは気を遣ったね。」

  彫り風景  
  <荒々しい線、緩やかに流れる線。広重の想いを丹念に彫り上げていく。>  
     

 

◎摺師・山本に聞く

     

摺師・山本

「色のバランスが絶妙な作品で、特に岩の肌の色づくりにはこだわりましたね。黄、緑、茶の要素がまじりあったような色で、明るくすると深みがでないし、色を落としすぎても暗くなってしまうので調整するのに気を遣いました。

あとはメインであるさるはしと紅葉に加えて、左右にそびえる岩、間を流れる川、遠景の山と民家...と要素が多くて、単純な遠・近の二面で表現する遠近感とは違う難しさがありました。
特に岩のすきまから覗く遠景を表現するには岩肌が目立ちすぎてもいけないので、いいバランスになるように丁寧に摺り上げました。」

摺り風景
  <ばれんで和紙の繊維の中に摺りこまれる鮮やかな水性の絵具。>  
     

 

甲斐 さるはし

江戸時代の絵師・広重と現代の職人の感性と技術が合わさることで、傑作「甲斐 さるはし」が江戸時代当時に人々が楽しんだ鮮やかさ細やかさそのままによみがえりました!

みなさまも是非、現代に復刻された秋の傑作「甲斐 さるはし」をお手に取ってお楽しみください。



新復刻完成!紅葉に色づく秋の名勝 「甲斐 さるはし」 商品詳細ページはこちら >>

新作復刻完成

 

山々の緑が、赤や黄色といった秋色に段々と染まりゆくこれからの時季。

このたび、アダチ版画では紅葉に色づく秋の名勝を描いた歌川広重の傑作「甲斐 さるはし」を新たに復刻いたしました。今回は、新作復刻完成を記念して、本作の魅力について迫ります!


紅葉に色づく秋の名勝「甲斐 さるはし」

日本三大奇橋にも数えられる名勝・猿橋の秋の絶景を描いた本作は、紅葉に彩られた橋を見上げるような構図で、人工的な橋の構造と自然が生み出した荒々しい岩の表面や渦巻く川の流れを対照的に描写しています。

真っ赤に彩られた紅葉の色彩が目に映える、秋の風情満載な作品です。

甲斐 さるはし
 

■ 名勝・猿橋とは?

現在も山梨県大月市を流れる桂川に架かる橋で、江戸時代、甲州街道沿いの宿場にあったため人の往来が多く、広重も甲斐を訪れた際にスケッチを行ったと言われています。
岩国の錦帯橋(山口県)、木曽の桟橋(現存せず)と共に「日本三大奇橋」の一つとされています。

歌川広重 「甲斐 さるはし」

 

紅葉

橋脚を使わずに、両岸から張り出した4層のはね木によって支える構造まで細密に描写しています。

 
橋脚
 
真っ赤に染まる紅葉に彩られた猿橋。橋上から望む紅葉は、今と変わらぬ絶景がうかがえます。

 

【Pick up!】 六十余州名所図会

代表作「東海道五拾三次」を始めとする全国各地の風景を描いてきた歌川広重が晩年に手がけた、日本全国を「五畿七道」に区分していた頃の全国各地の名所を描いたシリーズ。名所の四季折々の風景を季節感たっぷりに描いています。

 

新復刻完成!紅葉に色づく秋の名勝 「甲斐 さるはし」 商品詳細ページはこちら >>


今回新たに復刻した「甲斐 さるはし」の他にも名勝・猿橋を描いた浮世絵は数多く残されています。その中でも名作として知られているのが、同じく広重が描いた竪二枚の「甲陽猿橋之図」。

こちらも「甲斐 さるはし」同様、川辺から猿橋を見上げるような構図で、遠景に満月を望み叙情溢れる作品です。当時から、名所として訪れる人が多かった猿橋の人気ぶりが垣間見れます。

甲陽猿橋之図
歌川広重 「甲陽猿橋之図」 猿橋

 

名所絵の巨匠・広重が描く構図の工夫

■ 風景画の常識を破る縦長の構図

西洋画もそうですが、風景を描いた浮世絵の多くは、横長の画面に広く描くのが定番といえるのではないでしょうか。広重も30代に描いた代表作「東海道五拾三次」では、横長に描いています。

しかし、本作では描きたい部分を限定して、縦長の画面に風景を切り取ることで存在感を強調し、名勝を下から望む広重ならではの自在の視点を組み合わせることによって、インパクトのある構図を作り出しています。その構図にかける工夫に、広重が"名所絵の巨匠"と言われる所以があるのではないでしょうか。

日本橋 朝之景甲斐 さるはし
横長の画面に描かれた
東海道五拾三次「日本橋 朝之景」
六十余州名所図会「甲斐 さるはし」

これから迎える紅葉の季節にぴったりの新復刻作品「甲斐 さるはし」。
次回は、制作の視点から本作の魅力について迫っていきます!

新復刻完成!紅葉に色づく秋の名勝 「甲斐 さるはし」 商品詳細ページはこちら >>

 

ファン待望の第二弾は東京タワー!絵師・山口晃が描いた「新東都名所 芝の大塔」完成。

現在活躍中のアーティスト・山口晃氏を絵師に迎え、アダチ版画の彫師・摺師の伝統木版技術で制作した現代の浮世絵「新東都名所 芝の大塔」がこの度完成いたしました。

「新東都名所」とは、今の東京のランドマークとなる場所を山口氏独自の視点で描いたシリーズで、2012年に日本橋を描いた「日本橋 改」を第一弾として出版いたしました。過去・現在・未来が混在した懐かしくも新しい山口氏ならではの独特の世界がお楽しみいただけるシリーズです。

待望の第二弾は、"東京タワー"こと「芝の大塔」

第一弾「日本橋 改」は、山口氏初のオリジナル浮世絵ということで各方面で話題となり、出版1年程で限定150部の作品が売切れてしまうほど好評を得る事が出来ました。

その後も皆様から「新東都名所シリーズの続きは?」「次はいつ出るの?」と言ったお客様からのお声をたくさんいただきました。
そんなご要望に応えるべく、皆さんに楽しんでいただく東京の今のランドマークはどこだろう?といくつか考えた末、山口氏と「やはり、東京タワーですかね」ということで第二弾「芝の大塔」の制作がスタートいたしました。

新東都名所「芝の大塔」
新東都名所「日本橋 改」  
<前作「新東都名所 日本橋 改」>   <新作!「新東都名所 芝の大塔」>


絵師・山口氏の描いた版下絵、自由自在な筆遣いにも注目!

版下絵

前回同様、制作は江戸の浮世絵と全く同じ方法をとっており、絵師・彫師・摺師がそれぞれ分かれて仕事をしています。

絵師・山口氏には、東京のランドマークとして今なお人気の"東京タワー"を描くということをお願いし、和紙に筆で版下絵を描いていただきました。こちらがその版下絵です。

筆でこれだけの細かく美しい線を描いていただけるのも山口氏だからこそです。

東京タワーは、構造をしっかりと捉えメカニックな線で、一方、芝周辺で生活する人々の様子はのどかな柔らかい線で描き分けられています。広重も顔負けの美しい版下です。

版下絵・部分

 

今回この版下絵と対峙し、一番長い時間山口氏の線に触れた彫師・新實にその魅力を聞いてみました。

彫師・新實

Q.これまで浮世絵の復刻から現代の作品までたくさんの木版画作品を彫ってきたとおもいますが、山口氏の作品を手掛けての感想はどうですか?

新實:現代の作家で風景で版下絵からというのは珍しいよね。浮世絵師でいうと広重らしい線を感じるね。木の描き方とか人物とか。山口先生の他の作品をみると人物は通常かなり細かく描いているけど、今回の作品の人物は非常に浮世絵風というか、うまく省略されて描かれているよね。
 

Q.山口氏の描いた版下絵を彫るにあたって特に気をつけた部分などはありますか?

新實:風景だからやはり遠近感が線でも出るように、版下に従いながらも、東京タワーはより遠くに見えるよう若干細く彫るように気をつけたかな。あとは、神社の石垣の部分は先生の描いた線のとおりにリズムをもって彫ったね。デジタルの作品と違って、線にリズムもあるので彫るのもスムーズだったよ。

 

彫師・摺師の技で繊細に、そして色鮮やかな浮世絵へ

それでは、次はその新實の彫の作業を見てみましょう。

彫り風景

山口氏が描いた版下絵を山桜の木に貼って、線を彫っていきます。

小刀という道具一本で線の両脇に刀を入れ、その後、線の部分が凸になるように周りの部分を取り除くと作品のアウトラインの部分、主版(おもはん)が完成します。


主版 <彫りあがった主版> 差し上げ図

この後に、山口氏に色を入れた差し上げ図にて色を指定いただき、色の部分の板が彫られることになります。

<山口氏が色を指示した差し上げ図>

 

摺り風景

作品制作に必要な版木(はんぎ)がすべて揃うと次は、いよいよ摺の作業になります。

山口氏の指定に従って一色ずつ丁寧に摺り重ねていきます。

  塔・部分

微妙な色のバランスなど何度か校正を仕上げ、確認をしていただきようやく校了~完成!

今回、メインになる「東京タワー」には、微妙なぼかしの技術を駆使し、塔がスッと見えるよう工夫を重ねています。是非、お手元でご覧ください。

 

新東都名所「芝の大塔」

山口晃 新東都名所「芝の大塔」

山口晃

山口 晃(やまぐちあきら)

1969年東京生まれ。96年東京芸術大学大学院美術研究科絵画専攻(油画)修士課程修了。 01年第4回岡本太郎記念現代芸術大賞優秀賞。13年『ヘンな日本美術史』で第12回小林秀雄賞受賞。
 
時空が混在し、古今東西様々な事象や風俗が、卓越した画力によって描き込まれた都市鳥瞰図・合戦図などが代表作。観客を飽きさせないユーモアとシニカルさを織り交ぜた作風も特徴のひとつ。絵画のみならず立体、漫画、また「山愚痴屋澱エンナーレ」と名付けた一人国際展のインスタレーションなど表現方法は多岐にわたる。五木寛之氏による新聞小説「親鸞」「親鸞 激動編」「親鸞 完結編」の挿絵を通算3年間担当する。15年2月21日より5月17日まで水戸芸術館現代美術センターにて個展開催予定。
(撮影:松蔭浩之/Courtesy Mizuma Art Gallery)
 
 

■作品仕様

限定部数   150部(作家直筆サイン・番号入り)
画 寸 法   39.2 × 26.9 cm
額 寸 法   58.0 × 45.0 cm
版     種   木版画
用     紙   越前生漉奉書
制     作   アダチ版画研究所
    彫 新實護允・岸千倉
    摺 久保田憲一・京増与志夫
監     修   (公財)アダチ伝統木版画技術保存財団
協     力   ミヅマアートギャラリー

 

絵師・山口晃が描いた「新東都名所 芝の大塔」 商品詳細はこちら >>

先週金曜日にリリースいたしましたアダチ版画研究所が新たに復刻した作品。
歌川広重「山城 あらし山 渡月橋」。桜の季節を前資して、大変好評です!

この作品は、歌川広重の晩年、とはいっても名所江戸百景を出版する前に出したシリーズ「六十余州名所図会」の中でも人気の1図です。日本全国を「五畿七道」と言って区分していた頃の全国各地の名所を描いたシリーズで、山城といえば、京都のことですね。
全国各地全70箇所を描いた大シリーズで、アダチ版画研究所では、今回の作品で9図目となります。歌川広重ならではの、それぞれの土地の名所を季節感たっぷりに描いています。

今回、この京都の春を描いた「山城 あらし山 渡月橋」の完成を記念して、アダチ版研究所ではこれまで復刻した「六十余州名所図会」全9図を4/14まで特別価格にてご紹介しております。
詳しくはこちら >>

先月末に、彫り上がった版木で、現在摺師の親方・仲田が一色ずつ摺っております!あと数日で完成の予定です。摺りたての色鮮やかな浮世絵を是非、手にとって見てください。

品質へのこだわり

品質へのこだわり

アダチの浮世絵は、手にして初めて分かる、熟練の技術と日本の伝統が詰まっています。

製作工程

制作工程

一切機械を使うことなく一枚一枚職人の手仕事により丁寧に作られている木版画です。

厳選素材・道具

厳選素材・道具

江戸当時の風情を感じられる当時の浮世絵の再現にこだわり、厳選した素材と道具を使用。

職人紹介

職人紹介

最高の作品を創り出すために、日々技術の研鑽を積む熟練の職人たち。

浮世絵の基礎知識

浮世絵の基礎知識

意外と知らない?浮世絵の世界。浮世絵の基礎知識をご紹介。