浮世絵のある暮らし 住まいのプロに聞く!

浮世絵のある暮らし 住まいのプロに聞く!

江戸時代、人々は購入した浮世絵を、自宅の壁や柱、あるいは障子や襖に貼って楽しんだりもしたそうです。浮世絵の中でも、古今東西の絵画を研究した北斎の作品は、現代の私たちの目にも新しく、日常の中でクールに楽しむことができるのではないでしょうか。とは言っても、実際に自分の家に絵を飾ったことのない方も多いのでは? そこで、住宅メーカーのプロのコーディネーターに、現代の洋風建築の中に、どんな浮世絵が合うのか、どう飾ればカッコよく見せられるかをお聞きしました。
※ 本記事は2017年の取材内容を2020年に再編集したものです。

日常の中に「浮世絵を飾る」という新提案

2017年1月に東京・錦糸町にオープンした住宅メーカー・ミサワホームさまのモデルハウスでは、復刻版の浮世絵をとても素敵に飾っておられます。今回は、こちらのモデルハウスの設計、インテリアコーディネートを担当されたミサワホーム商品開発部・施設デザイン課の馬場純さんに、浮世絵の楽しみ方、飾り方についてお話をうかがいました。

馬場純(ばんば・じゅん)さん 
ミサワホーム(株)商品開発部 シニアデザイナー。「banhaus」「つくし野の家」といった一般住宅を手掛ける一方で、住育や食育の視点に基づく保育施設「コビープリスクールあたご」(第9回キッズデザイン賞受賞)、越後湯沢ならではの自然環境に適合するデザイン建築「四季クワトロ」を手掛ける。2013年に「四季クワトロ」、2017年に当モデルハウスの「URBANCENTURY錦糸町モデル」が、グッドデザイン賞を受賞した。

——今回モデルハウスに北斎の浮世絵を採用された理由を教えてください。

「墨田区にあるモデルハウスということで、墨田区にゆかりのあるものをインテリアに取り入れたいという思いがありました。墨田区と言えば、葛飾北斎が生まれ過ごした土地として有名です。このモデルハウスのオープンの2ヶ月前に、すみだ北斎美術館が開館したこともあり、北斎の浮世絵をぜひ飾りたいと思っていたんです。」

墨田区の錦糸町住宅公園内にあるミサワホーム「URBANCENTURY」の5階建モデルハウス。(提供:ミサワホーム)

人気の北欧家具と浮世絵の相性はピッタリ!

——洋室に浮世絵が飾ってあっても、まったく違和感がないですね。

「浮世絵を飾っているフロアは、二世帯住宅の親世代が住むイメージです。北欧のハンス・J・ウェグナーというデザイナーの家具を多く使って、ナチュラルで落ち着いた雰囲気にしています。最近はこのような雰囲気の住まいを求めていらっしゃるお客様が多いと感じます。

浮世絵は、こうした北欧家具と相性が良いですね。どちらも自然の素材を生かし、つくられた感じのない、優しさのある、触ってみたくなる、そういったところが共通していて、馴染みやすいのだと思います。」

ナチュラルで落ち着いた雰囲気の部屋。自然の素材を生かした北欧家具は浮世絵との相性が良いそうです。(提供:ミサワホーム)

建築と浮世絵の深い関係

——以前から浮世絵に興味を持っていらっしゃったのでしょうか。

「浮世絵と建築にはどこかつながりがある気がしていて、頭にひっかかっている、そういうところはありました。栃木県の那珂川町馬頭広重美術館に行った際、展示作品はもちろんですが、隈研吾氏が広重の浮世絵からインスピレーションを受けて設計したという美術館自体のデザインに感銘を受けました。

あとは旧帝国ホテルを設計したことで有名なフランク・ロイド・ライト氏が、浮世絵の収集家でしたね。彼の代表作である「落水荘」は浮世絵に影響されていると聞いたことがあります。
浮世絵の構図には日本らしいバランスがあって、そういったものが建築へのインスピレーションにつながるんじゃないかと思います。」

住まいのプロに学ぶ! 浮世絵インテリア術

——今回モデルハウスに浮世絵を飾るにあたって、気を付けたところなどはありましたか。

「今回、お部屋のアクセントカラーとして青を使っています。リビングのチェアや壁紙の一部などが青系となっているので、浮世絵についても青が印象的に使用されている北斎の「神奈川沖浪裏」と「凱風快晴」を選びました。

寝室への廊下に飾られた北斎の「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」の復刻版。波の藍色が空間にしっくり馴染んでいます。(提供:ミサワホーム)

あとは、額縁を部屋に合わせることを意識しています。今回、寝室とお風呂の間の廊下に飾っている「神奈川沖浪裏」の額縁は、部屋で使用している木の色に近い、ナチュラルな木目額を使用しています。玄関に飾っている「凱風快晴」の額縁は黒で、マットはグレーです。この部屋は木目調か、黒、青、グレーといった系統の色が合いますので、その中で調整して、今回のマットと額縁の組み合わせになりました。」

明るい色でお客様をお出迎えする北斎の「冨嶽三十六景 凱風快晴」。玄関スペースをキリッと引き締める黒い額。(提供:ミサワホーム)

——最近の住宅事情では「絵を飾るスペースがない」という声も多いのではないでしょうか。

「そうですね。最近お住まいを新築される方の中でも、なるべく部屋を明るくしたいということで、壁を少なめにしてたくさん窓をつけたいと仰る方は多いです。でも実はこれは逆効果で、反射する壁がないと、かえって部屋が暗く見えたりするんです。ですので、僕が設計するときは、できるだけ白い壁を残します。そこに絵を飾ると雰囲気がでますよね。あとは、今回玄関に飾っている「凱風快晴」のように、棚の上などに立てかけるのもありですね。」

自然光を上手に取り入れたウッディな洋間に、驚くほど浮世絵がマッチ。(提供:ミサワホーム)

——住まいと建築のプロから見た浮世絵の楽しみ方のお話、とても興味深く、参考になりました。ありがとうございました。

飾る場所や飾り方を変えると、ガラッと印象の変わる浮世絵。ご自宅のインテリアなどとの相性を考えながら、ぜひ色々な角度から浮世絵を楽しんでみてはいかがでしょうか。

ミサワホーム 錦糸町展示場
住 所:東京都墨田区錦糸4-18-7 錦糸町住宅公園内
時 間:10:00~17:00
定休日:火・水曜日
ミサワホームウェブサイト(錦糸町展示場)

*本記事内で紹介されている浮世絵は、アダチ版画研究所が制作した復刻版です。

協力・ミサワホーム株式会社
文・「北斎今昔」編集部