アダチ版復刻浮世絵で楽しむ “The Great Wave” 江戸の人々を魅力した鮮やかな色合いを!

アダチ版復刻浮世絵で楽しむ “The Great Wave” 江戸の人々を魅力した鮮やかな色合いを!

日本人なら誰もが知る葛飾北斎の代表作「神奈川沖浪裏」。その人気は日本だけにとどまらず、“The Great Wave”として、いまなお世界中で愛され続けています。 その「神奈川沖浪裏」を現代でも鮮やかな摺りたての色合いで、ご家庭で楽しめることはご存知ですか? 今回は、江戸時代から継承される伝統の木版技術で復刻した「神奈川沖浪裏」をご紹介いたします!

北斎が追求し続けた迫真の大波

世界で最も有名な日本の浮世絵師・葛飾北斎(1760-1849)。彼の作品のなかでも最高傑作と名高いのが、この「神奈川沖浪裏」です。富士山を背景にせり上がった大波が迫力満点で、大胆な構図ながらも波の臨場感を感じさせるリアルな描写は、世界中の人々に影響を与えました。

アダチ版復刻浮世絵 葛飾北斎「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」(提供:アダチ伝統木版画技術保存財団)

自然の森羅万象のすべてを描こうとした北斎が、特に生涯こだわりを持って挑み続けた「波」の表現。北斎がこの「神奈川沖浪裏」を描いたのは70代前半と言われています。そこに至るまで北斎は幾度も波を描き、変幻自在の水の動きを捉えるために試行錯誤しています。

たとえば「神奈川沖浪裏」の原型といわれる初期作「おしをくり はとう つうせんのづ」は、構図は似ているものの波の描き出し方が全く異なります。北斎が人々を惹きつける波の表現を追求した結果完成した作品が、傑作「神奈川沖浪裏」だったのです。

アダチ版復刻浮世絵 葛飾北斎「おしをくり はとう つうせんのづ」(提供:アダチ伝統木版画技術保存財団)

*北斎の波の表現の探求については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
"The Great Wave" 迫真の大波が生まれるまで(「北斎今昔」編集部/2020.07.03)

江戸の人々を魅了した鮮やかさを今の時代に楽しむ

いまではこの北斎の最高傑作を、展覧会の図録やポストカードはもちろん、Tシャツや文具など多彩なグッズで気軽に楽しむことができますよね。江戸時代においても、浮世絵版画は大衆向けの出版物として広く気軽に親しまれていました。

そして当時と同じように、ご家庭で気軽に浮世絵版画をお楽しみいただけるのが「復刻版浮世絵」です。復刻版とは、現代の職人たちが、江戸時代と同じように制作したリプロダクションのこと。版木を彫り直し、一枚一枚、和紙に手で摺っています。浮世絵版画最大の魅力は、和紙と木版摺の独特で柔らかな風合いと、当時の人々が楽しんだであろう、鮮やかな色合いです。

浮世絵を江戸時代当時と同じ技術で復刻する彫師・摺師(提供:アダチ版画研究所)

この「神奈川沖浪裏」の復刻版浮世絵でも、江戸で人気を博した鮮やかな藍色を存分に堪能することができます。「北斎今昔」の運営母体であるアダチ版画研究所が制作する復刻版「神奈川沖浪裏」にも、彫師・摺師の高度な職人技が見て取れます。

作品の魅力を最大限に引き出す熟練の職人技

まずは「彫」に注目してみましょう。実は若い頃に彫師の修業をしていたと言われる北斎。そのためか北斎は、作品を制作する際、線の描写に特に強いこだわりをもっていたようです。北斎の制作した版下絵(版木を彫るための下絵)は、他の絵師の作品と比べて大変線が細かく描かれています。

浮世絵版画の制作工程において、絵師が担当するのは下絵を描く作業。基本的に墨一色で描きます。葛飾北斎が描いたのはおそらくこのような下絵。(提供:アダチ伝統木版画技術保存財団)

この細かな線を忠実に彫りあげるには、高度な彫の技術が必要となります。特に、波頭の部分にみられる抑揚のある複雑な線は彫師の腕の見せどころ。熟練の技術をもった彫師は、迫力のある画面を作るために、線が持つリズムや全体のバランスに配慮しながら、北斎の筆の強弱までもを理解し、彫り分けていくのです。

独特のクセがあり、非常に細かい北斎の描線。現代の彫師は、フラスコで手元に光を集中させて彫の作業を進めます。(提供:アダチ版画研究所)

次に「摺」に着目。北斎が追求し続けた波の表現に欠かせない藍色には、江戸時代後期にヨーロッパから輸入された化学系顔料のプルシアンブルー(ベロ藍)が使われています。それまでの日本にはなかった、鮮やかなベロ藍の発色は当時の人々を魅了し、瞬く間に流行したようです。

しかし、摺師がばれんに力を込め、和紙の中にしっかりと絵の具をきめ込まなければ、ベロ藍の鮮やかな青の魅力を最大限に引き出すことはできません。また、濃さの異なる2種類のベロ藍を巧みに摺り重ねることで、色鮮やか、かつ立体的な大波が生まれるのです。より魅力的な波をつくり出すためには、濃淡の異なるベロ藍の絵具の調合も、重要となります。

3種類の藍色によって表現されている北斎の波。(提供:アダチ伝統木版画技術保存財団)

北斎が追求した「波」の表現は、職人たちの熟練の技術なしには完成しないのです。
*北斎「神奈川沖浪裏」の魅力を現代の彫師・摺師が語ったこちらの記事もあわせてご覧ください。
徹底解剖!世界の名画「神奈川沖浪裏」を完成させた浮世絵の技 (「北斎今昔」編集部/2020.07.04)

ご自宅で楽しむことのできる復刻版浮世絵では、職人たちのこだわりを、より身近に感じることができるのではないでしょうか。浮世絵の楽しみ方のひとつとして「復刻版浮世絵」を「北斎今昔」のみなさまにも知っていただけたら幸いです。

商品情報

■ アダチ版復刻浮世絵 葛飾北斎「神奈川沖浪裏」
[価格]額なし 13,000円(税別)/専用額付 25,000円(税別) 
[購入方法]アダチ版画研究所 ショールーム または 同社オンラインストア にて
★2020年8月29日22:00〜 24時間限定 「神奈川沖浪裏」送料無料キャンペーンを実施中!

メディア掲載・出演情報
アダチ版画研究所の職人が下記のメディアに出演しました。

★TV★「新美の巨人たち」(テレビ東京系列)
葛飾北斎の「富嶽三十六景」を紹介。番組ナビゲーターのシシド・カフカさんが名作誕生の背景を探り、アダチ版画研究所を訪問くださいました。
放送日:2020年8月29日(土) 22:00
出演:京増与志夫(摺師)、岸千倉(彫師)

文・「北斎今昔」編集部