北斎さんの富士山 〜復刻版で見る「富嶽三十六景」〜 (21)【PR】

北斎さんの富士山 〜復刻版で見る「富嶽三十六景」〜 (21)【PR】

連載「北斎さんの富士山 〜復刻版で巡る「富嶽三十六景」〜」は、アダチ版画研究所が制作した復刻版で、北斎の「富嶽三十六景」全46図を毎週2図ずつご紹介する企画です。前回の記事はこちら≫

「北斎さんの富士山」の楽しみ方

作品No.33 「東海道金谷ノ不二」

アダチ版復刻浮世絵 葛飾北斎「富嶽三十六景 東海道金谷ノ不二」(画像提供:アダチ伝統木版画技術保存財団)

江戸と京都を結ぶ東海道。駿府の国と遠江の国の境界である大井川には橋がなく、旅人は川越人足(にんそく)に肩車したり、連台と呼ばれる台の上に載って川を渡りました。料金は、その日の水量によって違ったそうです。

■ カクダイ北斎
北斎が描いた大井川の川面はとてもドラマティック。水色の水面には、びっしりと細い流線と無数の点が藍色で摺られています。がっちりと人足の肩にしがみつく旅人たちの様子が、水流の勢いを物語ります。

アダチ版復刻浮世絵 葛飾北斎「富嶽三十六景 東海道金谷ノ不二」より(画像提供:アダチ伝統木版画技術保存財団)

■ ふじさんぽ
東海道の難所の一つであった大井川。現在は大井川橋が架かり、徒歩20分弱で大井川を渡れてしまいますが、江戸時代は、雨で川が増水すると旅人たちは足止めに遭いました。境界や距離の意味合いが、時代によって異なることを改めて実感します。大井川の渡しは、江戸寄りが島田で、京都寄りが金谷。島田市が主催する大井川大花火大会は、この島田と金谷の両岸で花火を打ち上げます。今回のふじさんぽスポットは、北斎が描いた大井川の金谷側、「大井川大花火大会 金谷側会場」。


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作品No.14 「武州千住」

アダチ版復刻浮世絵 葛飾北斎「富嶽三十六景 武州千住」(画像提供:アダチ伝統木版画技術保存財団)

描かれているのは、長閑な田園風景。腰を下ろして釣りを楽しんでいる二人に、馬を引いた馬子が近寄っていきます。登場人物全員の視線を画面の奥へと向け、彼方にそびえる富士の存在を意識させます。

■ カクダイ北斎 
遠くの富士山まで見渡せる晴々とした遠望。ところが手前には、それを妨げるかのような堰枠が。「富嶽三十六景」の主役である富士山を、堰枠の合間から覗き見る、なんとも天邪鬼な北斎です。

アダチ版復刻浮世絵 葛飾北斎「富嶽三十六景 武州千住」より(画像提供:アダチ伝統木版画技術保存財団)

■ ふじさんぽ
千住宿は「従千住花街眺望ノ不二」(第6回)でもご紹介したように、日光・奥州道中の第一番目の宿場町。しかし、北斎はそんな宿場町の賑わいとは程遠い、静かな田園風景を描いています。では、この千住は、どこを描いたのでしょうか? ヒントとなるのは、富士山の眺望を遮る堰枠。この堰は、現在の足立区千住にあった元宿堰ではないかと考えられています。そこで今回のふじさんぽスポットは「元宿堰稲荷神社」。すぐ近くの交差点脇にある千住浮世絵顕彰碑によって、この作品の視点が解説されています。


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editor's note:これまでの連載で「富嶽三十六景」が当初は藍のモノトーンで摺られる「藍摺絵」のシリーズとして構想されていたことをご紹介しました。色彩については途中で路線変更したものの、輪郭線の部分(主版)を藍色で摺ることは36図の刊行まで続行されました。好評を博した「富嶽三十六景」は、36図揃ったところで、さらに10図の追加を決定。このとき追加10図については、輪郭線を墨(黒)で摺りました。大井川の水の青が印象的な「東海道金谷ノ不二」ですが、実はよく見ると、輪郭線は黒いんです。

※ 葛飾北斎の「葛」の字は環境により表示が異なります。また「富嶽三十六景」の「富」は作中では「冨」が用いられていますが、本稿では常用漢字を採用しています。
 

       
「北斎さんの富士山」連載目次
第1回(2020.10.30)「本所立川」「駿州片倉茶園ノ不二」 第2回(2020.11.06)「遠江山中」「深川万年橋下」□□□□
第3回(2020.11.13)「駿州江尻」「相州仲原」 第4回(2020.11.20)「神奈川沖浪裏」「穏田の水車」
第5回(2020.11.27)「下目黒」「青山圓座枩」 第6回(2020.12.04)「尾州不二見原」「従千住花街眺望ノ不二」
第7回(2020.12.11)「五百らかん寺さざゐどう」「登戸浦」 第8回(2020.12.18)「甲州犬目峠」「東海道吉田」
第9回(2020.12.25)「相州箱根湖水」「東海道程ケ谷」 第10回(2021.01.01)「凱風快晴」「江都駿河町三井見世略図」
第11回(2021.01.08)「駿州大野新田」「東海道江尻田子の浦略図」 第12回(2021.01.15)「東都駿臺」「隅田川関屋の里」 
第13回(2021.01.22)「信州諏訪湖」「甲州伊沢暁」 第14回(2021.01.29)「御厩川岸より両国橋夕陽見」「相州江の島」
第15回(2021.02.05)「相州梅沢庄」「甲州三坂水面」 第16回(2021.02.12)「江戸日本橋」「礫川雪ノ旦」
第17回(2021.02.19)「相州七里濱」「武陽佃嶌」 第18回(2021.02.26)「甲州石班沢」「武州玉川」    
第19回(2021.03.05)「山下白雨」「身延川裏不二」 第20回(2021.03.12)「東都浅草本願寺」「常州牛堀」        
第21回(2021.03.19)「東海道金谷ノ不二」「武州千住」 第22回(2021.03.26)「東海道品川御殿山ノ不二」「甲州三嶌越」
   
第23回(2021.04.02)「上総ノ海路」「諸人登山」   

 

文・「北斎今昔」編集部
提供・アダチ版画研究所