北斎さんの富士山 〜復刻版で巡る「富嶽三十六景」〜 (2)【PR】

北斎さんの富士山 〜復刻版で巡る「富嶽三十六景」〜 (2)【PR】

連載「北斎さんの富士山 〜復刻版で巡る「富嶽三十六景」〜」は、アダチ版画研究所が制作した復刻版で、北斎の「富嶽三十六景」全46図を毎週2図ずつご紹介する企画です。前回の記事はこちら≫

「北斎さんの富士山」の楽しみ方

作品No.34 「遠江山中」

アダチ版復刻浮世絵 葛飾北斎「富嶽三十六景 遠江山中」(画像提供:アダチ伝統木版画技術保存財団)

北斎作品の構図は、よく幾何学的と言われます。この「遠江山中」でも、画面の中にいくつもの大小の三角形の構成を見つけることができます。画面を横切る巨大な角柱は、ともすれば窮屈な印象を与えかねませんが、空や山肌の青系統のグラデーションが、遠くの富士山に向かって、抜けるような広々とした空間を作り出しています。

■ カクダイ北斎
この作品で面白いのが煙の表現。火元に近い煙は灰色の渦巻が連なっています。版木の凹部が白い筋(和紙の肌地の白です)となって、モクモク沸き上がる煙の動きを効果的に見せています。

アダチ版復刻浮世絵 葛飾北斎「富嶽三十六景 遠江山中」より(画像提供:アダチ伝統木版画技術保存財団)

■ ふじさんぽ
「遠江(とおとうみ)」は、静岡県の西部を指しますが、「山中」だけでは残念ながら場所を特定できません。そこで「北斎今昔」では、かつて天竜川の流れを利用して切り出した木材を運搬していた浜松市天竜区の水窪(みさくぼ)地域をふじさんぽのスポットに選ばせていただきました。北斎作品に描かれた巨大な木材も、天竜川の水運を使って運んだかもしれません。この地域には、国指定重要無形民俗文化財の「西浦(にしうれ)田楽」という芸能が伝わっていて、毎年旧正月の18日に夜を徹して田楽が舞われるそうです。


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作品No.10 「深川万年橋下」

アダチ版復刻浮世絵 葛飾北斎「富嶽三十六景 深川万年橋下」(画像提供:アダチ伝統木版画技術保存財団)

富士山を橋の下から眺めるという面白い視点の作品です。川面と空の青いグラデーションの間で、橋の形状と両岸の風景の遠近法が強調されます。ゆるやかにカーブを描く橋の上には人がいっぱい。

■ カクダイ北斎
この作品ではやや脇役(?)な富士山。船が行き交う川のため、万年橋は橋脚が長く、その合間からのぞくような格好に。けれど、北斎は水上の舟の舳(へさき)を富士山に向けて、鑑賞者の視線を自然と富士山に誘っています。

アダチ版復刻浮世絵 葛飾北斎「富嶽三十六景 深川万年橋下」より(画像提供:アダチ伝統木版画技術保存財団)

■ ふじさんぽ
万年橋(萬年橋)は、江東区を東西に流れる小名木川(おなぎがわ)に架かる橋。万年橋を越えて、小名木川は隅田川に合流します。深川の町は、この小名木川をはじめ、町中至る所に水が流れていて、素敵な水辺の散歩コースがいくつもあります。江戸の下町情緒を楽しむなら、万年橋から徒歩10分ほどの深川江戸資料館もおすすめ。同館では11月10日より企画展「こうとう浮世絵づくし」がスタートしますので、ますます浮世絵に描かれた江戸の街並みを楽しめます。


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editor's note:東京・原宿の太田記念美術館では、11月8日まで「江戸の土木」展を開催中。今回の2作品は同展出品作からセレクトしてみました。天竜川を降った長野や静岡の木材は、江戸の都市づくりにも用いられていたのだとか。林業のまち・水窪の「西浦田楽」は、なんだかまるで漫画『鬼滅の刃』の奥義の継承を彷彿とさせました。こうした伝統芸能が今日まで途絶えることなく伝えられているのは、本当に素晴らしいことですね。

※ 葛飾北斎の「葛」の字は環境により表示が異なります。また「富嶽三十六景」の「富」は作中では「冨」が用いられていますが、本稿では常用漢字を採用しています。

 

「北斎さんの富士山」連載目次
第1回(2020.10.30)「本所立川」「駿州片倉茶園ノ不二」 第2回(2020.11.06)「遠江山中」「深川万年橋下」□□□□
第3回(2020.11.13)「駿州江尻」「相州仲原」 第4回(2020.11.20)「神奈川沖浪裏」「穏田の水車」

 

文・「北斎今昔」編集部
提供・アダチ版画研究所